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ハシバミ観覧車5

○ ● ○ 観覧車のゴンドラから降りると、柊先輩と村本さんがその外で待っていた。僕らの姿を認めて村本さんが軽く手を上げてくれる。 二人の様子を見ると、ちゃんと仲直りできたみたいだ。安心。 僕と颯太が二人のところへ行くと、村本さんは空を仰いでスマホを確認する。 「そろそろいい時間か」 柊先輩が村本さんに声をかける。 夕日の出る時間帯というのは本当に短い。先ほどまで見ていたはずのオレンジは消えかけ、あたりは暗くなり始めている。 今日はもう終わりだなって、少し淋しい。 「ああ。出口向かうか」 「そうですね」 柊先輩と村本さん、僕と颯太という最初と同じ並びで歩き出す。 「亜樹、楽しかった?」 「うん。また四人で出かけたい」 「じゃあ俺と二人きりとどっちがいい?」 颯太の瞳が細まって、口角がいやらしく上がる。 こんなの答えなければいい。颯太はからかってるだけなんだし、適当に誤魔化しても何も悪くない。 「そ、そんなの二人きりの時……だよ……」 でも僕はやっぱり馬鹿で、唇を尖らせつつ、そう答えてしまう。 颯太の服の裾をきゅっと掴む。 颯太を瞳だけで見上げると、満足そうに、そしてとても嬉しそうに、笑んでいた。この表情だし、素直に答えるのもありかと思える。 「それにしても二人、仲直りできてよかったね」 「うん。柊先輩は村本さんのこととなると自分を見失っちゃうんだね」 「まあー……慣れてないだろうしね」 柊先輩は何でも完璧そうだけど、恋愛面は経験値が乏しいみたいだ。ここだけは僕が勝っていたりして……。

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