481 / 961
ハシバミ観覧車5
○ ● ○
観覧車のゴンドラから降りると、柊先輩と村本さんがその外で待っていた。僕らの姿を認めて村本さんが軽く手を上げてくれる。
二人の様子を見ると、ちゃんと仲直りできたみたいだ。安心。
僕と颯太が二人のところへ行くと、村本さんは空を仰いでスマホを確認する。
「そろそろいい時間か」
柊先輩が村本さんに声をかける。
夕日の出る時間帯というのは本当に短い。先ほどまで見ていたはずのオレンジは消えかけ、あたりは暗くなり始めている。
今日はもう終わりだなって、少し淋しい。
「ああ。出口向かうか」
「そうですね」
柊先輩と村本さん、僕と颯太という最初と同じ並びで歩き出す。
「亜樹、楽しかった?」
「うん。また四人で出かけたい」
「じゃあ俺と二人きりとどっちがいい?」
颯太の瞳が細まって、口角がいやらしく上がる。
こんなの答えなければいい。颯太はからかってるだけなんだし、適当に誤魔化しても何も悪くない。
「そ、そんなの二人きりの時……だよ……」
でも僕はやっぱり馬鹿で、唇を尖らせつつ、そう答えてしまう。
颯太の服の裾をきゅっと掴む。
颯太を瞳だけで見上げると、満足そうに、そしてとても嬉しそうに、笑んでいた。この表情だし、素直に答えるのもありかと思える。
「それにしても二人、仲直りできてよかったね」
「うん。柊先輩は村本さんのこととなると自分を見失っちゃうんだね」
「まあー……慣れてないだろうしね」
柊先輩は何でも完璧そうだけど、恋愛面は経験値が乏しいみたいだ。ここだけは僕が勝っていたりして……。
ともだちにシェアしよう!