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新しい季節の始まりは4

「おらー席つけ」 松田先生が出席簿で肩を叩きながら教壇に立つ。 珍しく教室は一瞬で静まった。そして松田先生の持つプリントに視線が集まる。 松田先生はその様子を見て、にやあっと笑った。 「まずは諸連絡からだ」 途端、えー!!と大声が上がる。まっつー、けちー!なんて声まで聞こえた。 「わかった、わかったって。貼ってやるよ」 わざとらしい溜め息のあと、黒板にプリントが二枚貼られた。片方が各クラスの担任、もうひとつはそれぞれのクラスが書かれている。 磁石がくっついた瞬間、わっとみんなが群がった。 そして担任について言う声や、クラスが離れた人たちの声など、同心円状にさざめきが広がっていった。 一番後ろの席の僕は出遅れてしまったけど、颯太と一緒に固まりに挑んだ。颯太の助けでなんとかプリントが視界に入る。 ……僕は一組。担任は松田先生。 それを確認して席に戻った。颯太もすぐ戻ってくる。 颯太のクラスまで確認することはできなかった。 でも、大丈夫。たぶん大丈夫。 でも、嫌な予感は、当たりやすい。 颯太をじっと見つめる。そして動き出す口。 「俺も一組だったよ、亜樹」 「……よかった……!」 瞬間、大きな安堵に包まれる。 「ついでに清水くん、松村くん、轟くん、小室くんも一緒」 「よく確認できたね……」 「亜樹が余裕なさすぎなの」 颯太が苦笑して、くしゃくしゃ僕の頭を撫でる。僕もいつの間にか笑っていた。 「はいはい、席つけー。みんな確認したな?んじゃそれぞれのクラスにこれから移動してもらう」 今いるのは二年一組の教室だ。クラス確認後に三年の階に移動して、そのあと全校集会。 各々荷物を持って教室を出ていく。 「渡来、間宮」 「清水くん」 二人で廊下に出たところ、後ろから清水くんが寄ってくる。 「一緒だな」 「松村くんもでしょ?」 「あー、そう。茂も」 「凛くんも轟くんも一緒だね」 「ああ、だな」 清水くんはなんだかんだ松村くんと一緒は嬉しそうだ。それに七班全員が揃ったことも。 ニッと笑顔を向けられる。 嫌がらせの問題はまだ残るけど、とりあえず三年生は無事に始まりそうだ。

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