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聞こえぬ足音1
おはよーという声がちらほら聞こえる昇降口。
僕は自分の下駄箱の前で、真っ先に上履きの中を確認する。
「また入ってる……」
「昨日より雑だね」
「うん……」
中に無造作に入れられた画鋲を取り出していく。
昨日は踵の部分に貼り付けられていたから、それよりは明らかに適当だ。ということは、他に何か仕掛けているのかもしれない、なんて勘ぐってしまう。
「ゲームかよって感じ」
「あー、トラップを掻い潜って、みたいな?」
「そうそう」
颯太が人差し指を立てた手を振る。
まだ画鋲だけだからどこまで酷いことをされるかはわからない。指輪の時みたいに盗まれるってこともあるかもしれない。
考え込んでも意味ないし、とりあえず教室に向かった。
流石に廊下では何も起こらず、無事に教室へ辿り着く。挨拶を交わしながら机へ。
轟くんの影響か、颯太は先んじて机を覗こうとはしなかった。
それに昨日もなかったし、教室内では何もしない可能性が高い。
そう何とは無しに中を覗いた。
「ひっ」
「亜樹っ……」
颯太が僕に手を伸ばす前に、僕は颯太の胸に飛び込む。
ぞわぞわ、ぞわぞわ、気持ち悪い感覚が体を駆け巡る。だって机の中に、たくさんの、虫がいた。
「亜樹……大丈夫?」
僕はうんともすんとも言わず、颯太の制服をきゅっと掴む。
颯太は僕の頭を撫でて、机の中に手を伸ばした。取り出されたのは、カサカサ聞こえる袋。芋虫やらバッタやら、何匹もの虫が詰め込まれたものだ。
怖くて顔を上げられない。
「うっわ……」
颯太も思わず絶句している。
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