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顕現1

「今日は何かあるに一票」 「もう、ゲームじゃないんだよ?」 「二日連続なしだったから今日こそ」 「颯太〜」 颯太は微笑みながら下駄箱に向かう。僕もくすくす笑いながら上履きを覗いた。 中に画鋲は、ない。 「何か入ってた?」 「あっ、ううん!」 「えー三日連続かぁ……」 手に取ったものを咄嗟に隠す。 床に落とした上履きがパタッと音を立てる。 「気分なのかもね」 「まあ規則性ある方がおかしいか」 颯太はさして気に留めず歩き出す。その背から目をそらし、手の中を見る。 入っていたのは手紙だった。 手紙といってもただ紙を折りたたんだだけ。でもこれは見るからに犯人の意思がはっきり表れていそうだ。 何か嫌な予感がして隠してしまったけれど。 「亜樹?」 「あっ……ごめん」 はっと顔を上げたら颯太は既に数歩先にいる。バレないように手紙をポケットに滑り込ませて、颯太に駆け寄った。 「ボーッとしてどうしたの?」 「なんで何も入ってなかったのかなって」 「そんな心配しなくて平気だよ」 「うん……」 ぽんぽん頭を撫でてくれる颯太に笑む。そしてまた嫌がらせについて話しながら教室に入った。 手紙は家で見た方がいい。何を書かれているかわからない。だから落ち着ける場所の方がいいに決まっている。 でも、どうしても。 一時間目の英表も、二時間目のCEも、三時間目の倫理も、いまいち集中できず。 ポケットの中がまるで熱を帯びているようにじくじく熱い。早く中を見ろ、中を見たいって、感情が僕の中を渦巻く。 もうこれは見た方がいい。 そう決意する。 「次移動だよ」 「うん。理科だよね」 「そう」 颯太と僕では選択の仕方が違う。 颯太は化学基礎と物理基礎。僕は地学基礎と生物基礎。でも理科講義室は近いからいつも途中まで一緒に行く。 リュックを開けて一番上に入っているジャージを机に置く。そしてその下から教材を取り出し、まとめて教室を出た。

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