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顕現2

溜め息を吐き出して、理科講義室を出る。授業ってなんか知らないけど、とにかく終わる頃には疲れる。 帰りは一人だ。同じ教室に戻るのだからわざわざ待ち合わせはしない。 今回ばかりは都合がいい。ひと気のない近くのトイレに入る。個室に入り、しっかり鍵を閉める。そしてそろそろと手紙を取り出した。 白い紙。四つ折りにされてピンクのシールで止めてある。 一見したら女の子のものみたいだ。 ぺりっとシールを剥がし、意を決して中を見た。 「…………っ……」 絶句。 というか、なんというか。 中身は実にシンプルで豪快で、とても、わかりやすい。書いてあったのはひと言。 『間宮颯太と別れろ!!』 だった。 力強い筆文字。 いっそ潔くてショックを受けるより呆気にとられてしまう。まあこれで犯人の狙いはわかった。ただこれが目的なら、もう少しわかりやすく嫌がらせをすればよかったと思う。何をされたって颯太と別れるわけはないけど。 手紙を元のように畳んで筆箱にしまう。そしてトイレから出て、教室に向かう。 昼休みに入ってがやがや騒がしい校内。喧騒に揉まれて、僕は教室へ辿り着いた。 後ろのドアの前に来て、ふと顔を上げて、颯太が視界に入って。 ぐっと胸が締め付けられた。 ああ、別れたくない。絶対いや。 決して別れるなんて運命は訪れない。そうわかっているのに、やっぱり僕は弱いみたいだ。 「あっ、亜樹。おかえり」 「颯太」 パタパタ颯太に近づいていく。みんな昼休みだからがやがやしているし、抱きついてしまおうか。 そう思ってふと恋人を見る。手には体育着。 「先に着替えてからご飯にしよ」 「そっか。球技大会」 「うん」 五月中旬の球技大会に向けて、最近の体育はそれぞれの種目の練習になっている。 教材を机に置いて、僕も体育着を取り出そうとする。リュックの中を見る。 入っていない。 そういえば授業前に机の上に置いたはずだ。しかしもちろんなくなっている。 ああ、とても嫌な予感。 胸の締め付けが再開される。 嫌だ、嫌だと思いつつ、まずはロッカーを見た。

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