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顕現3
あった。
「亜樹?」
颯太の声を背にロッカーの中のものを取り出す。そうして机の上に広げた。
「……それ」
「うん……」
とても使える状態ではなかった。
上は穴だらけ、裂け目だらけ。下も下でウエストの部分が切れ目だらけになっているし、穴だって多い。
「半袖、短パンだけ?」
「……うん」
「そっか……」
授業間はない。あったとしても盗むものがない。そう油断していた。
また買い換えなきゃ。どこで買えるのだろう。どうしてこんな、こんな目に合わなければいけないのだろう。
ポトリ、ポトリ、溜まっていく。
「亜樹」
「……そうた」
颯太が僕の顔を下から覗き込む。愛しそうに頬を撫でて、素早くキスしてきた。
羞恥より、涙が湧いてきそう。
「ほら、俺のジャージ使って」
「あ……」
「ん?」
「ううん。ありがとう」
本当はジャージも持ってきている。サブバッグに入れてあるから、何もされていないと思う。
でも、颯太の服、着たいなぁって。
上だけがジャージという人がこの時期は多い。それにそぐわない格好を颯太にさせる。少し寒いかもしれない。僕のわがままのせいで。
でもちょっとだけ、ちょっとだけ、甘えたい。これくらいの褒美は、許されるかな。
制服を脱いで、颯太のジャージを着ていく。ふわっと颯太の匂いが昇ってきた。まるで包まれているみたいだ。
だぼだぼの袖を鼻に寄せる。スンッて息を吸うと、颯太の香り。
「あーき」
その手をパッと掴まれた。颯太が不満げな顔をしている。
「可愛いことしてないでご飯」
「……はぁい」
我慢できなくなっちゃうでしょってその表情が語っていて嬉しくなる。
チャックを上まで閉めて、袖をまくって、ウエストの紐をきつく締めて、裾もまくって。体格の差は悔しさでなく幸福になるから、我ながら呆れてしまう。
最後にこっそり匂いを嗅いでから椅子に座った。
こらって怒られちゃったけど。
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