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顕現6
「バケツは戻しときます。じゃあ」
「うん。ごめんね」
バケツに伸ばした手を止め、仁くんが僕を見る。
「ごめん、じゃなくて」
拗ねたようにいう仁くんにふっと笑ってしまう。
「ありがとう、仁くん」
「はい。どういたしまして」
笑顔で言う。仁くんは依然不服そうにしつつ頷いた。そして身を翻す。
僕は安全になった靴を履いて昇降口を出た。
正門の内側に颯太がいた。目が合って、手を振り合って、僕は駆け出す。
「颯太っ」
「亜樹、おかえり」
「ただいま」
ふわっと咲いた笑顔が嬉しい。僕はちょこっと颯太の服を掴んだ。
「あのね」
「うん」
「また嫌がらせ……あったの」
「どんな?」
額を颯太の肩に擦り寄せる。
「水の入ったバケツが下駄箱の上にあって、靴とワイヤーで繋がってた。靴を取ると水が零れるの」
「でも大丈夫だったんだね」
「ん……靴を取る前に気がついた」
颯太が労わるように背を撫でてくる。
温かい。どうして颯太の熱ってこんなに心地いいんだろう。
「今日はどっちの家がいい?」
「颯太……」
「うん。近いもんね」
もう今日は疲れてしまった。
ちなみに僕の家より颯太の家の方が近い。位置関係としては、僕の家と学校の間に颯太の家って感じ。
颯太と少しくっついて今日は帰った。
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