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顕現9

ある日の学校。んーと伸びをする。 「やっと昼休み〜」 「お昼ご飯食べられるね」 移動教室が終わって、教室に向かう。颯太がはぁ〜っと息を吐いた。 移動先の教室は一階だったから、三年一組は階段登ってすぐ。 教室に颯太が先に踏み入れる。それから僕も続く。 「あ、渡来」 「へ?」 するとなぜかドア近くのクラスメイトに声をかけられる。同じクラスだから流石に顔と名前はわかるけど、話したことはなかったと思う。 「これ渡来のだよな?」 そう言って目の前の彼は英語の教科書を渡してくる。 足跡が大きくついていて、ページはボロボロ。剥ぎ取られたようなページもある。ただどうにか読めるページは見覚えのある書き込みがあるし、元から消えかけていた名前もうっすら読める。 「校庭で拾ったんだよ。落とすなんてうっかりしてんな」 「あっ……うん、ドジで。拾ってくれてありがとう」 「どういたしまして〜」 曖昧に微笑んで、前を向く。颯太が僕を心配そうに見る。僕は颯太にも笑んで席に促す。 そこで二人して席に視線を向けると、清水くん、松村くん、轟くん、凛くんが勢ぞろいしていた。 「またなんかあったんだな」 「うん。今日はこれ」 「亜樹くんの教科書が……」 「この教科書って非売品だよな、確か」 席に座るや否やみんなが声をかけてくれる。 僕への嫌がらせが始まってから、みんなこうやってしょっちゅう心配してくれる。朝練があるからってわざわざ校庭を見ることも続けてくれているみたいだし。 机の上に置かれた教科書がぽつねんと僕を見る。その周りを六人が取り囲む。 「オレの知り合いにくれそうな人いるかも!」 「ありがとう、松村くん。だめそうなら頼むと思う」 「おう!」 でも頼りきりというわけにもいかないから、ちゃんと自分でも方法を探さなきゃ。 問題集じゃないからやっぱり非売品なんだろうな。いっそのこと全てコピーさせてもらうというのもありかもしれない。だけどその場合、先生にどう説明したらいいのか。この教科書の状態じゃ明らかにわざとだとわかるし。

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