512 / 961

顕現10

「もう新学期始まってから一ヶ月以上経つのに終わらないな……」 「目的はわかってないんだったよな?」 「うん。全然手がかりがない」 「そろそろ犯人探した方が良さげだよねぇ」 「じゃあ見張ってみるか?」 清水くんが提案する。颯太が言っていたのと同じだ。 確かに授業間も使って嫌がらせをしてくる段階。辞書、ノート、教科書、体育着。使えなくなったものはもう四種類。これからだって増えるはず。 それは流石に困る。 「まあそれが妥当な手段だな〜。交代制で見張るか」 「ああ。まず朝練組が先に。俺と凛のが始まるの遅いから、清水と松村が先の方がいいか」 「ああ。渡来、シャーペンと紙ある?」 「あっ、うん」 机の中のファイルからもう用済みのプリントを取り出す。裏が無地だ。 それから書くもの……。 あれ、見つからない。 「……さっきの教室に忘れちゃったっぽい。取ってくるね」 「俺もついてく」 「ん。ありがとう」 筆箱だけ忘れてしまうとか、ボケている。 清水くんたちにごめんと目配せしてから颯太と教室を出る。 先ほど通ったばかりの階段を降りていく。 みんなが折角知恵や体力を貸してくれるんだから、急がなきゃ。 そう考えていて、僕はついてくる足音なんか聞こえなかった。 だから魔の手が迫っていることも気づかずーー 「おい」 「……へ?」

ともだちにシェアしよう!