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安穏3

「仁くん」 「亜樹先輩」 いつも通り図書室の前で待つ仁くんに声をかけて、二人して図書室の中へ。そして定位置に掛ける。 今日は英語の質問がひとつだけ。一年の範囲だからそこまで複雑ではなく、時間をかけずに説明は終わった。仁くんの理解力が高いというのもある。 テキストと筆記用具を片付けながら仁くんはふと声を漏らした。 慣れてきた最近は仁くんとの雑談で終了時間が伸びることもしばしば。 「そういえば明日、球技大会ですよね」 「うん。一位になったクラスは確かテーマパーク無料券だっけ?」 「そうですね。太っ腹ですよね」 「まあそれでやる気引き出したいのかもね」 「亜樹先輩、冷めてる」 「そんなことないよ」 二人顔を見合わせて笑う。 「あっ、俺サッカー出るんです。A班なんで、時間あれば見にきてください」 「うん。行くね」 「やった! すごく頑張れそう!」 「大袈裟だなぁ」 仁くんはそれはもう嬉しそうにガッツポーズ。思わず立ち上がりかけた彼を僕は慌てて止めた。 仁くんは拗ねたような照れたような顔で大人しくなる。 部活の新歓期間前にサッカー部に参加していたくらいだし、仁くんは上手いんだろうな。大活躍かもしれない。 「亜樹先輩は何に出るんですか?」 「バレーボール。A班だよ」 「わかりました。見に行きます!」 「来なくていいのに」 「行きますって」 正直運動は得意でないからあまり見られたくない。かっこいいわけではないし、寧ろ恥をかくかもしれないし。 でもこうやって可愛い後輩が応援してくれようとしている。それにクラスに少しでも貢献したい気持ちもある。 だから苦手なりに頑張ってみようかなぁって、今回の球技大会は思っている。 緊張はするし、恐怖も少し。 でも新たなクラス、新たな年度、初めてのイベント。 少なからず高揚する自分もいた。

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