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球技大会開始3
ニコッと微笑みあって二人で歩き出す。
「一組の試合どこだっけ?」
「んーとね」
事前に配られたプリントを広げる。細かい対戦表が書かれている。
「あっ、清水くんと松村くんの班がすぐ試合だ」
「じゃあそっち向かおっか」
「うん」
試合は第一グラウンドのAコート、だそうだ。
清水くんたちは一発目から試合。緊張するだろうな。
僕の一回目の試合はいつだっけ。確か昼の後だ。
想像したらキュッと心臓が締め付けられた。
「緊張する……」
「あはは、まだ早いでしょ」
「でも……」
「試合になったら俺が見ててあげる」
「ん……安心する」
ひと気のない木陰を進んでいく。
こっそり颯太の小指に自分の小指を絡めた。密やかな手繋ぎだ。
「あっ、そうだ」
颯太はそれに愛しそうに瞳を細めたと思ったら、そう声をあげる。
「亜樹が一生懸命、頑張れたらご褒美あげる」
「ご褒美……って?」
「それは秘密」
「えー」
颯太が唇に人差し指を当てる。
言葉は不服だけど、その様はすごくかっこいい。だから許せる。いや、怒るどころじゃない。
悔しい。
「ほらほら、ついたよ」
「ずるい」
「許してよ〜」
ぽんぽんって頭を撫でられる。気持ちとは裏腹に擦り寄ってしまう僕。
ああ、もうなんでもいいんだ。一緒にいれるなら。
グラウンドがよく見えて、かつ日陰のところに腰を下ろす。
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