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球技大会開始4
グラウンドを眺めて、二人の姿を探す。
どうやら今は試合前のウォーミングアップの時間らしい。パス練であったりシュート練をそれぞれの班がしている。
かたや青、かたや赤のゼッケンだ。
二人はどっちだろう。
その時、青側の選手がパシュッとシュートを決める。
普通の流れで出たそれだけど、不思議と視線を引きつける。思わず感嘆の息を、観客に漏らさせるほどには。
そしてその人物とは、松村くん。
普段からは考えられない。僕の中で一番意外性のある人だ。
「今の見た?」
「見た。すごいね、松村くん」
「かっこよかったね」
「うんうん」
何はともあれ、これで一組が青だとわかった。
応援できる。
「……はぁっ、はっ……」
すると隣から走る音が聞こえ、そして息を苦しそうに吐き出す音に変わった。
自然とそちらを見ると。
「れーんくーん!! 頑張れー!!!」
それは、姫野くんだ。
かなり急いで来たのか息も絶え絶えなのに、思い切り手を振って、ジャンプまでしている。
清水くんは本当に来たのかと嫌そうな顔。
まあ確かに、男を弄ぶような子だとわかっているからその反応も仕方ない。でもこんなに尽くされたら落ちる人もいるんだろうなぁって思う。
末恐ろしいな、姫野くん。
……なんて、関係のなくなった僕は他人事みたいにそう考えてしまう。
「姫野くんって何組なんだっけ?」
「んーと……たぶん十二組、かな」
「あー……大丈夫なのかな」
「え?」
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