523 / 961

球技大会開始4

グラウンドを眺めて、二人の姿を探す。 どうやら今は試合前のウォーミングアップの時間らしい。パス練であったりシュート練をそれぞれの班がしている。 かたや青、かたや赤のゼッケンだ。 二人はどっちだろう。 その時、青側の選手がパシュッとシュートを決める。 普通の流れで出たそれだけど、不思議と視線を引きつける。思わず感嘆の息を、観客に漏らさせるほどには。 そしてその人物とは、松村くん。 普段からは考えられない。僕の中で一番意外性のある人だ。 「今の見た?」 「見た。すごいね、松村くん」 「かっこよかったね」 「うんうん」 何はともあれ、これで一組が青だとわかった。 応援できる。 「……はぁっ、はっ……」 すると隣から走る音が聞こえ、そして息を苦しそうに吐き出す音に変わった。 自然とそちらを見ると。 「れーんくーん!! 頑張れー!!!」 それは、姫野くんだ。 かなり急いで来たのか息も絶え絶えなのに、思い切り手を振って、ジャンプまでしている。 清水くんは本当に来たのかと嫌そうな顔。 まあ確かに、男を弄ぶような子だとわかっているからその反応も仕方ない。でもこんなに尽くされたら落ちる人もいるんだろうなぁって思う。 末恐ろしいな、姫野くん。 ……なんて、関係のなくなった僕は他人事みたいにそう考えてしまう。 「姫野くんって何組なんだっけ?」 「んーと……たぶん十二組、かな」 「あー……大丈夫なのかな」 「え?」

ともだちにシェアしよう!