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球技大会開始5

颯太の渋い顔を見つめる。どうしてクラスが関係あるのだろう。 「だってあのクラス一番気合入ってたと思うんだよね」 「あっ……他のクラスの人、応援しちゃ反感買うよね……」 「まあー……姫野くんの立場って独特そうだし、平気なの、かな」 「……だといいけど」 「亜樹は優しいね」 うりうりと頭を撫でられて自分でもハッとなる。 散々嫌がらせしてきた人物なのに心配するなんて。優しいというよりお人好しなのではないか。 思えば僕は安易に人を許して、同情してばかりだ。それで不利になることだってあるだろうに。僕って、馬鹿だなぁ。 「亜樹のそういうところ、素敵だと思うよ」 「颯太……」 「ほら、始まる」 「……うん」 颯太が僕の掌を撫でる。そしてグラウンドを示した。 ピーッという笛の音が鳴って、両選手が並んでいく。 颯太が好きだと言うなら、大丈夫。 一人頷いてグラウンドに集中し始めた。 審判役の先生が試合開始を合図して、ボールが動き出す。 最初にボールを蹴ったのは僕たちのクラス。 サッカーは経験者が多いから、慣れた様子でパスが繋がれていく。 一方で相手チームは運動が苦手な子が多いのか、ボールについていくだけで精一杯といった様子だ。 「茂!」 「うおっしゃー!」 ゴールに近づいてきた時、ボールが渡ったのは松村くん。 そのまま鮮やかにゴール。かと思いきや、松村くんと相対する子が一人。 松村くんは右へ左へボールを転がして抜くことを試みるけど、相手の子も相手の子で食らいついてきている。 どうやらチーム内で抜群に上手いその子をゴール前に配置して耐える作戦みたい。

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