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球技大会開始6

松村くんは時々動きを止めたり、かと思えば抜こうとしたりしている。でも状況は変わらない。 僕はスポーツに詳しくないから、どう言えばいいのかわからないのだけど、とにかく二人とも上手いんだろうなってことは確実だ。 一進一退の攻防線って感じだろうか。 周りの人も下手に手を出せないみたいで、その場で固まっている。 「……あ」 その時、松村くんの横をすり抜ける影がひとつ。 上手い一年生が一瞬振り返る。 「蓮! あの子にかっこいいとこ見せたれー!!」 一年生が顔を戻した時には、もう清水くんにボールが渡っている。 楽々ボールを受け取った清水くん。ゴールは目の前だ。 まさか来るとは思っていなかったのか、ゴールキーパーの子はあわあわしている。 その隙にザシュッと清水くんのシュートが決まった。 「わぁあ、すごいね!」 「阿吽の呼吸だね!」 僕と颯太は思わずパチパチ拍手をしてしまう。 「余計なこと言うなっての!」 「うぇーい!」 一方で清水くんと松村くんは慣れた手つきで拳を合わせた。 流石はサッカー部、部長とキャプテンだ。 ただ一年生相手にも容赦がないっていうか、最初から飛ばしているというか。 まあでも目指せるならできるだけ上を目指したい。それはどのクラスでも一緒だ。 「れーんくーん!! かっこいいー!!」 隣からは姫野くんの可愛い声が飛ばされている。ぴょんぴょん跳ねて、手を振って、愛らしい笑顔で。 清水くんは変わらずしかめっ面。松村くんはそれを見てにやにやしている。そして殴られていた。 痛そう。 「頑張れー!」 でもやっぱり姫野くんは全く気にしないで声援を送る。 心が鋼でできているんじゃなかろうか。 審判の人がボールをコートの中央に持っていく。そして一年生から今度はスタート。 どうしたらいいんだろうって不安そうに蹴り出されたボールは、あっさり僕たちのチームにカットされる。 先程の清水くんと松村くんのプレーで勢いを掴んだのか、そこからは僕たちのチームが優勢のまま進んでいった。

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