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晴れ2
颯太にバレないように仁くんの姿を探す。でもうまく見つからなかった。
「亜樹見て」
「ん?」
「気合い入ってるね」
肩を叩かれて相太の指差すを方を見る。そこでは片方のクラスが円陣を組んでいた。
「勝つぞー!」「おーぇい!」みたいな感じの掛け声。大声をグラウンドに響かせて、円がはける。
もしかしてこっちのクラスだろうか。なんとなく仁くんもやりそうなイメージ。
何とは無しに視線を巡らせていると、
……目が合った、と、思う。
吸い寄せられるように視線が絡んだ。
仁くんは僕の姿を認めると、嬉しそうにふわっと笑った。遠目で見てもわかるくらいに。
普通はクラスの応援に行くものだから、本当に来るか確証はなかったんだろう。
もしこの時間にクラスの試合が入っていたら、僕はここに来る言い訳を思いつけなかったかもしれないし。万一その試合が颯太のものだったら、仁くんには申し訳ないけど、そっちを優先してしまっていただろうし。
仁くんは笑顔を見せたあと、ウォーミングアップに戻っていった。
ちらりと隣を見る。颯太は全然別のところを見ていた。
「どうしたの?」
「えっ? どこ見てるんだろって」
「あー審判」
「審判?」
「なんかねー……」
びっくりした。まさか気づかれるなんて。視線だけでうかがったのに。
でも何の疑いもなく審判について話し出してくれたから安心だ。なんでもウォームアップ中の審判は暇そうだったり、変な動作をしていたり、面白いのだとか。
颯太に合わせて審判を見てみると、確かに面白かった。まさか自分に視線が注がれるとは思わないのだろう。
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