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晴れ3

そうしてくだらない会話をしていたら、笛の音が鳴る。 青ゼッケンが仁くんだ。 どっちかに思い入れがあるとかではないので、とりあえず仁くんを応援しよう。 センターラインに並んだ仁くんの表情は、普段の可愛い笑顔と異なって引き締まっている。見ているこっちまでドキドキしてきた。 すると仁くんが突然こちらを見た。咄嗟に僕は『頑張って』と声に出さず口を動かす。 仁くんはさらに気合いの入った表情になった。 そして試合が始まる。 ボールは仁くんのクラスから。 一人の子が蹴って、仁くんに渡る。そのままドリブルして、ゴールに向かう。もちろんそのまま進めるわけもなく、前には人が立ちはだかる。そこではパスを使ってかわす。 そんな感じでゴールに迫ったけど、結局のところカットされてしまった。 そして今度は逆サイドにボールが行く。でもまたそれもカット。 主にそれの繰り返しで試合は進んでいった。 試合は拮抗している、という言葉が1番正しいと思う。 試合も終わりに近づいているが、戦局が大きく動くことはない。1-1のまま、試合は続いていた。 「動かないね」 「うん……。見ている方はハラハラドキドキ」 「そうなん……、あっ! 来た来た来た!」 「わー! 取られた!」 僕も颯太もいつの間にか固唾をのんで見守っていた。 中立の立場だから必然的に、どちらのクラスが優勢になってもドキドキする。だから余計に引き込まれているのかもしれない。 二人して叫んだり、指差したり、完全に煩い観客になっている。 「どっちかが点入れないとだよね」 「同点の時はどうなるんだっけ」 「えっと、おっ!」 「ん?」 颯太がハッと目を見開く。急いでグラウンドに視線を戻す。 一人の子がドリブルでぐんぐんゴールに近づいている。 「あっ!」

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