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のち曇り3
「相変わらずバカップルだな」
「清水くん、いじわるだ」
「反応いい渡来が悪い」
「何それ」
唇を尖らせて清水くんを見ていると、ぽんって頭を一回撫でられた。
そして清水くんは手を後ろについて、天井を仰ぐ。
「でもいいよなぁ、間宮。勉強も運動もできてさ」
「うん、確かに」
颯太は頭が飛び抜けていいだけでなく、運動もできてしまう。運動の方はずば抜けてというわけではないけれど、普通の人よりは全然できる。
そういえば柊先輩も運動が得意だった。これも九条の力なのだろうか、恐ろしい。
「大学選り取り見取りだろうし」
「そうなんだろうね」
もちろん颯太は学年トップの成績だ。もちろん特待生。
特待生は学年上から五人。だから僕は食らいつくのが大変になってしまった。なんとか五人の中に入り込めてはいるけれど。
ちなみにその五人のうちに凛くんもいる。知り合った後に気づいた。
「大学……全然決まってねーんだよなぁ……」
「そうなの? 意外だ」
「そう? まあでも、いくら大変でもさ、本当に行きたいところ、目指したいな」
心臓がきゅっと締まる。
清水くんはまだ上を見ている。
「……いくら大変、でも……」
「うん。じゃないと後悔するから」
「……そっか」
清水くんの瞳は、未来への希望で満ちる。若々しくて、不安なんて欠片もない。
すごくかっこよくて、眩しくて、眩しすぎて、痛い。
「お、始まるみたい」
清水くんは上体を前のめりにする。視線でコートをとらえると、既に颯太たちは一列に並んでいた。
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