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のち曇り4
○ ● ○
目の前に並ぶ二年生。見た所体格差はそこまでない。見るからに強そうな人物はいないみたいだ。
そもそも初戦だから相当運が悪くない限り、そんな人物のいるクラスに当たらないだろうけれど。
ちらっと亜樹を見る。俺を見ている。だが俺も見ていることには気づいていない。だからただキラキラした瞳だ。
よし、可愛い。頑張ろう。
礼を済ませたあと、審判がボールを持ってコートの中央へ行く。俺たちの方は身長190cm代のクラスメイト。相手側もそれくらいみたいだ。
審判の手が上へ向かう。その指先が、ボールから離れ。
パンッとボールを弾く音。
ボールを取ったのは、俺たちのチーム。
クラスメイトの一人がそのボールを取る。
「間宮!」
そしてすかさず俺に回してきた。自分からドリブルする気はないという様子で。
俺は受け取ったボールをドリブルし始める。一歩遅れてついてくる敵チームは、当然追いつけない。
最初くらい気持ちよく決めたい。せっかく亜樹が見ているのだし。
一人も周りにいない状態でゴール下へたどり着く。
床に跳ね返されたボールを両手で持ち、そのまま上へ弾き出す。
滑らかに飛んでいったボールは、ネットを潜った。
「うおおお! 間宮!」
「すげぇ!!」
チームメイトと応援の声が響く中、俺は真っ先に亜樹を見る。
亜樹は嬉しそうに拍手していた。俺はそんな愛しい恋人に向けてピースサインを作る。今度はちゃんと目が合っているので、亜樹は気づいた。そして頬を染めて、少し恥ずかしそうに手を振る。でもその口元には笑顔。
「チームメイトより嫁さんか」
「あ、轟くん」
当然ツッコミが飛んでくる。
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