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のち曇り6

ピーッという笛の音。 一分間のインターバルだ。応援スペースの方へ俺たちは向かう。 時間の関係でインターバルは一回のみ。試合時間も通常より短い。 「間宮大活躍じゃん」 「あはは、どうもー」 スペースにたどり着く前にクラスメイトがわらわら寄ってきた。間宮すげー、さすがーなんて声が多く上がる。 ちなみに今は14-2。 清水くんはごつって肩を小突いてきた。それから後ろを顎で示す。亜樹だ。 「颯太、お疲れ様」 「亜樹ー、ありがとう」 亜樹はぱたぱた俺に寄ってくると、タオルを差し出してくれる。ありがたく受け取って汗を拭く。 心なしか亜樹の香りがした気がする。 気のせいでもいい。とにかく俺は癒された。 亜樹が近くにいるだけで癒されはするけれど。 「颯太……」 小さな声に下を見る。 亜樹は心配そうに俺を見ていた。そして何かしようと手を持ちあげるが、途中で止まる。 「すごい汗……大丈夫?」 「バスケならこんなもんだよ」 少しの間をおいて、その手が伸びるのは、ゼッケン。 「うん……、残りも頑張ってね。でも無理はだめだよ」 「わかってる」 ゼッケンをちょこんと掴んで上目で見る亜樹。 走り回るからそこそこ疲れていたけれど、この可愛さで完全に回復した。 周りの溜め息は知らない。 「ありがとうね、タオル」 「うん」 タオルを亜樹の手に返す。互いに手を振って亜樹は応援席へ、俺はコートへ戻った。 今なら誰にも負けない気分だ。

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