539 / 961
のち曇り7
最後に点を入れたのが俺たちだったので相手チームがボールを持つ。コート内にボールが入り、一人がドリブルを始める。
当然俺はカットに走った。
「おわ……」
しかし急に二人が俺に張り付いてくる。
当然といえば当然だ。散々俺が点を重ねたんだから。
他のチームメイトを残りの人数で対処するなど、中々リスクがあると思う。まあこれで、まんまとハマってくれたと証明されたわけだ。
右に出るふりをすると、一瞬つられる二年生。そこを素早く左にかわして、俺はボールを持つ二年生の元へ。びっくりした彼からボールを奪う。
体を反転させた途端、また同じ二人が追いついてくる。俺はその場でドリブルをして留まる。
応援スペースの人々は息を止めて俺を見つめる。
こうしている間に他の子がボールを取りに来るのだろう。
ちらりと目の前の二人の後ろを見る。さっと動く影。
「轟くん!」
「おう!」
二人の頭の上を通してボールをパスする。
予想もしていなかったのか、カットされずに轟くんの手の中にボールは収まった。
そして彼の手から放たれるシュート。
足はスリーポイントラインを超えていない。
しゅるしゅる綺麗な軌道を描いたボールは、ネットを揺らすことなく点を入れた。
しんっと静まるその場。
そして次の瞬間には、わぁぁともうぉおともつかぬ大声が俺たちを包み込んだ。
「ナイス! 轟くん!」
「作戦成功だな!」
ガッと拳を合わせた。
ともだちにシェアしよう!