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のち曇り7

最後に点を入れたのが俺たちだったので相手チームがボールを持つ。コート内にボールが入り、一人がドリブルを始める。 当然俺はカットに走った。 「おわ……」 しかし急に二人が俺に張り付いてくる。 当然といえば当然だ。散々俺が点を重ねたんだから。 他のチームメイトを残りの人数で対処するなど、中々リスクがあると思う。まあこれで、まんまとハマってくれたと証明されたわけだ。 右に出るふりをすると、一瞬つられる二年生。そこを素早く左にかわして、俺はボールを持つ二年生の元へ。びっくりした彼からボールを奪う。 体を反転させた途端、また同じ二人が追いついてくる。俺はその場でドリブルをして留まる。 応援スペースの人々は息を止めて俺を見つめる。 こうしている間に他の子がボールを取りに来るのだろう。 ちらりと目の前の二人の後ろを見る。さっと動く影。 「轟くん!」 「おう!」 二人の頭の上を通してボールをパスする。 予想もしていなかったのか、カットされずに轟くんの手の中にボールは収まった。 そして彼の手から放たれるシュート。 足はスリーポイントラインを超えていない。 しゅるしゅる綺麗な軌道を描いたボールは、ネットを揺らすことなく点を入れた。 しんっと静まるその場。 そして次の瞬間には、わぁぁともうぉおともつかぬ大声が俺たちを包み込んだ。 「ナイス! 轟くん!」 「作戦成功だな!」 ガッと拳を合わせた。

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