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のち曇り8
○ ● ○
「わぁっ……! すごい!」
颯太と轟くんが拳を合わせるのを見ながら思わず拍手をする。
だって轟くんについている人はいなかった。フリーな状態で打てることも、あれほど綺麗に決まるのも、すごい。
今までのは全て作戦だったのだろうか。
颯太だけを活躍させて、意識を集め、他の人から視線を逸らす。颯太だけが手強い。そう思わせたところに、轟くん。
しかも今までスリーポイントは一回も決めていないから、そこでも意識がそれていたはずだ。
すごい。まだ一回戦なのに。
「どうだー、勝ってるか!」
「おう、茂。いやー、すげーよ」
松村くんが合流して清水くんの横にどっかと座る。そして清水くんが今の状況を松村くんに説明し始めた。
「あーきーくん」
「わっ、り、凛くんっ!」
相変わらず仲がいいなぁなんて思っていたら、反対側から急に声がかかる。
肩を思い切り震わせてしまった。
「なんでそんな驚くの〜」
「だっているって知らなかったから」
「え〜、ずっと隣にいたのに〜」
「えっ、あ、ごめん」
なんて失態だ。
いくら試合に夢中とはいえ、ずっと隣にいることに気づかないとは。いつも仲良くしてもらっている人なのに。
そもそも清水くんと試合前に会話をしている時に気づいてもいいはずだ。それなのに僕という人間は視界にすら凛くんを入れずに、
「ふふ〜」
思考を止めて凛くんを見る。
にやにやと、楽しそうな笑顔。
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