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のち曇り9

「嘘だよ〜。インターバルの時に来た」 「え……そうなの?」 さっきの表情の時点で嫌な予感はしていたけれど、やはり僕をからかっていたようだ。 「うん、そう~」 「もう、だまさないでよ……」 「だって亜樹くん面白いんだもん」 凛くんは楽しそうに笑って、それからコートに視線を向ける。 試合は再開していて、人がコートをあちらへこちらへ走り回っている。颯太のチームはもう颯太にだけボールを集中させるのをやめていた。 パスの回数が増えたことや、作戦の影響が残っているのか、相手チームはボールに食らいつくだけで精一杯みたいだ。見るからに右往左往している。 そのうちにまた轟くんがスリーポイントを決める。 「轟くんバスケやってたの?」 「ううん、やってないよ」 「でもあんなに点決めてすごいね」 「球技好きなんだよね、たかちゃん。それに勉学より運動って感じの人だから~」 たれ目をもっと垂れさせて、へにゃって凜くんは笑う。でも言っている内容は結構酷い。 「でも轟くんも一組だから……」 「ぎりぎりだけどね」 「凜くん辛辣だね……」 「そう~? でもほら見て」 同じ笑顔で凜くんは僕の袖を引いた。そして僕に顔を寄せ、コートの轟くんを指す。 「試合中はすごくかっこいいでしょ」 「……」

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