541 / 961
のち曇り9
「嘘だよ〜。インターバルの時に来た」
「え……そうなの?」
さっきの表情の時点で嫌な予感はしていたけれど、やはり僕をからかっていたようだ。
「うん、そう~」
「もう、だまさないでよ……」
「だって亜樹くん面白いんだもん」
凛くんは楽しそうに笑って、それからコートに視線を向ける。
試合は再開していて、人がコートをあちらへこちらへ走り回っている。颯太のチームはもう颯太にだけボールを集中させるのをやめていた。
パスの回数が増えたことや、作戦の影響が残っているのか、相手チームはボールに食らいつくだけで精一杯みたいだ。見るからに右往左往している。
そのうちにまた轟くんがスリーポイントを決める。
「轟くんバスケやってたの?」
「ううん、やってないよ」
「でもあんなに点決めてすごいね」
「球技好きなんだよね、たかちゃん。それに勉学より運動って感じの人だから~」
たれ目をもっと垂れさせて、へにゃって凜くんは笑う。でも言っている内容は結構酷い。
「でも轟くんも一組だから……」
「ぎりぎりだけどね」
「凜くん辛辣だね……」
「そう~? でもほら見て」
同じ笑顔で凜くんは僕の袖を引いた。そして僕に顔を寄せ、コートの轟くんを指す。
「試合中はすごくかっこいいでしょ」
「……」
ともだちにシェアしよう!