542 / 961
のち曇り10
正直、轟くんより凜くんを見てしまう。
なんだろう。笑顔であることは変わらないはずなのに、すごく彼女っぽい表情だ。ほんのり頬を染めて、輝く瞳を細めて。
普段からたかちゃん、たかちゃんって甘えているし、ベタベタしていて、二人は幼馴染を抜け出ていない感じがしていた。でもちゃんと恋人しているんだ。
「凜くんは轟くんが大好きなんだね」
「え~? んー、たぶんそうかなぁ」
「え? でも付き合ってるんでしょ?」
「うん。たかちゃんが告白してくれてー、違和感ないなーってOKした」
「そうなんだ」
一瞬、轟くんの苦労が垣間見えた気がした。
凜くんは相当轟くんのことが好きみたいだ。でも本人が鈍感すぎる。自分が抱く轟くんに対する想いに全然気づいていないんだから。きっと凜くんの方は幼馴染の延長としてこの関係をとらえている。
轟くんはやきもきしそうだな。
でも外野があまり口を出すことでもないだろう。
「かっこいいって伝えてあげれば?」
「え~今更じゃない?」
「せっかく付き合ってるんだし言ってみなよ」
「んー、そっかぁ……」
ただ少しくらいなら、許容範囲かな。だって轟くんが不憫だし。
凜くんは口元に指を当て考える。それからコートに視線を戻した。僕も視線を戻す。
試合は引き続き行われている。
たまに点を取り返されているけれど、颯太たちも点を入れていく。
凜くんの言った通り、轟くんはかっこよかった。生き生きとして走り、軽やかな足取りで点を決める。汗さえ爽やかだ。
でも、一番は颯太。そこは譲れない。
自然と視線も引っ張られていく。
ともだちにシェアしよう!