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のち曇り10

正直、轟くんより凜くんを見てしまう。 なんだろう。笑顔であることは変わらないはずなのに、すごく彼女っぽい表情だ。ほんのり頬を染めて、輝く瞳を細めて。 普段からたかちゃん、たかちゃんって甘えているし、ベタベタしていて、二人は幼馴染を抜け出ていない感じがしていた。でもちゃんと恋人しているんだ。 「凜くんは轟くんが大好きなんだね」 「え~? んー、たぶんそうかなぁ」 「え? でも付き合ってるんでしょ?」 「うん。たかちゃんが告白してくれてー、違和感ないなーってOKした」 「そうなんだ」 一瞬、轟くんの苦労が垣間見えた気がした。 凜くんは相当轟くんのことが好きみたいだ。でも本人が鈍感すぎる。自分が抱く轟くんに対する想いに全然気づいていないんだから。きっと凜くんの方は幼馴染の延長としてこの関係をとらえている。 轟くんはやきもきしそうだな。 でも外野があまり口を出すことでもないだろう。 「かっこいいって伝えてあげれば?」 「え~今更じゃない?」 「せっかく付き合ってるんだし言ってみなよ」 「んー、そっかぁ……」 ただ少しくらいなら、許容範囲かな。だって轟くんが不憫だし。 凜くんは口元に指を当て考える。それからコートに視線を戻した。僕も視線を戻す。 試合は引き続き行われている。 たまに点を取り返されているけれど、颯太たちも点を入れていく。 凜くんの言った通り、轟くんはかっこよかった。生き生きとして走り、軽やかな足取りで点を決める。汗さえ爽やかだ。 でも、一番は颯太。そこは譲れない。 自然と視線も引っ張られていく。

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