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のち曇り11
ゼッケンをはためかせ、汗を舞い散らしながら走る。ボールをカットして、点を決めて、チームメイトと笑顔でハイタッチ。
ああ、かっこいい。
顔にも、指先にも、体にも、颯太の何もかも全部に、視線が吸い寄せられる。
僕だからか、そうでないかはわからない。でも颯太はひときわ輝いているような気がする。
もう試合は終盤に近づいていて、声援が大きくなってきている。点差は正直大きいけれど、相手チームは諦めない。寧ろ選手も応援する人たちも、ますます勢いがついている。いいクラスだ。
もちろん僕のクラスだって声を出している。頑張れー!とか押せー!とか、いろいろ。
でも僕は少し気恥ずかしさがあって声が出せない。
代わりに心の中でたくさん念を送っている。そんなの相手にはわからないけれど。
頑張れ、颯太、みんなって思いながら、颯太の姿を目で追っていると、ふと颯太がこちらを見た。バチッと視線が絡む。
そしてその瞳が、愛しそうに細められた。
ほんの一瞬だったけれど、決して勘違いじゃない。
颯太はコートに視界を戻して、ドリブルでゴールに近づく。その足はスリーポイントラインで止まって。美しいフォームでボールが打ち出される。
綺麗な弧を描いてボールはネットに吸い込まれた。
得点表の数字が進む。同時に笛が鳴る。
「お〜間宮くんすごいね」
「うん……」
「あー見惚れちゃって〜」
凛くんの言葉に上の空で答える。
今の颯太が、あまりにもかっこよくて。
それに自惚れかもしれないけど、その可能性は十二分にあるけれど、僕に捧げてくれたんじゃないかって。
呆けている間に、礼が終わってチームの人がこちらへやってくる。
颯太は真っ先に僕のところへ来た。
「お、お疲れさま、颯太!」
汗をしとどに垂らす颯太。その様だってきまっている。
なんだかドギマギしてしまう。
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