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のち曇り12

僕は二枚目のタオルを出して颯太の頬を拭ってあげる。颯太はそれに擦り付けながら、ニコッて笑う。 「ありがとう〜最後のどうだった?」 「……すごく、かっこよかった」 「うん。かっこいいとこ見せなきゃって思った」 ふわふわ笑みがこぼれてしまう。 僕のためのシュートで間違ってなかったんだ。嬉しい。 途中からは颯太にタオルを明け渡す。 「たかちゃ〜ん、お疲れ〜」 「凛、見てたんだな」 「気づいてたくせに〜」 「うるせー」 隣では凛くんと轟くんが話し始めた。凛くんは笑う。轟くんは不満そうに顔をそらす。 「たかちゃん、かっこよかったよ〜」 「おう、さん……は? 今なんつった?」 「かっこよかったよ」 凛くんが顔色一つ変えずに言った言葉。対して轟くんは固まる。 一秒、二秒、三秒。 言葉を理解しようとしているのだろうか。 「は!? な、なに言ってんだよ、凛!」 そして急に顔を真っ赤にして怒鳴る。 「え〜かっこよかったんだからかっこいいって言ったの〜」 「な、なんだそれ!」 轟くんは明らかに照れているけれど嬉しそうだし、凛くんは意外な反応がもらえてご満悦な様子。 こういう結果に終わったなら、ちょっかい出したのもよかったかも。 「可愛いね」 「うん。初々しい」 颯太と顔を見合わせてこっそり微笑んだ。

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