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急迫2

「亜樹くん、一緒に頑張ろうね〜」 「凛くん」 「小室は緊張感ねーな!」 「そして渡来は緊張しすぎ」 「責任感じすぎる必要ないって」 凛くんが僕の肩に頭を乗せる。そして上目遣いでニコッと笑った。 それに松村くん、清水くん、轟くんと続けてくれる。 「ほら、みんなも言ってるし。自分なりに頑張ればいいんだよ」 「……ありがとう」 みんな、優しいなぁ。 ふわって笑みがこぼれた。 「はい、亜樹。その表情やめてお弁当食べよう」 「え?」 「ほらほら」 すると颯太が急に僕の頭を撫で、肩をポンポンッて叩く。 そして僕の代わりにお弁当の包みを開けてくれた。いや、それくらい自分で出来るのだけど。 「間宮ダサいぞ」 「ははっ、妙なところで心狭いな」 「煩い、たまにはいいでしょ」 「たまにってどの口が言うんだよ!」 「松村くんの言う通り〜」 何がどうなっているのかよくわからない。でもとにかく颯太がみんなに笑われている。 僕の顔がみっともなかったのだろうか。でもそれは颯太が笑われる理由につながらない。 というか颯太が僕を止めた理由すらわからない。 こういう時に考えてもこんがらがるだけなことはわかっている。 だから颯太のお弁当の包みを開けた。 「はい。開けてくれたからお返し」 颯太に笑いかけてお弁当箱を差し出す。 颯太はきょとんと目を丸くした。 「……敵わないな」 それから困ったように笑ったのだった。

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