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急迫3
お弁当を食べ終え、颯太と二人で教室を出た。
凛くんと轟くんはトイレ、清水くんと松村くんはまだ教室に残るという。
自分のお腹を軽く叩く。
お腹に食べ物が溜まって、少し元気が出たような気がする。
自分なりに、頑張ろう。
そういえば颯太がご褒美をくれると言っていたし、なおさら頑張れる。
「日陰通って行こうか」
「うん」
お昼の時に颯太に確認された日焼け止めは、ちゃんと塗ってある。だけど涼しいに越したことはない。体力も温存できそうだし。
温存するほどの体力を僕が持っているかといえば、それは疑問だけど。
颯太と並んで校舎の裏手に向かう。
少し遠回りだからひと気はない。でも僕らは時間に余裕を持って出たし、間に合うはずだ。
「……ん?」
「どうしたの、颯太?」
「なんか聞こえる」
「え? 僕は何も……」
不思議に思いつつ歩き続けていると、校舎裏に辿り着いた。茂みが多くある場所。
耳をすますと、僕にも喋り声が聞こえたような気がする。
「あ、あれって……」
颯太が足を止める。
僕も足を止めて、颯太が指差した先を見る。見覚えのある人がいる。
「姫野くん……?」
そう、姫野くんだ。
四人の生徒に囲まれている。姫野くんの顔は怯えを映したりしていないし、彼氏……なのかもしれない。
でもなんだか少し不穏な空気が漂っている。
「姫ちゃんさ〜、他クラスの人応援しちゃ流石にまずいっしょ」
僕も颯太もそれを感じ取って、茂みに隠れる。悪いことしているみたいだけど、何かあっても困る。
すると四人のうち一人が話し出した。
颯太が言っていた通りになっている。
「オレたち優勝目指してんじゃん?」
「いくら可愛い姫ちゃんでも、それはちょっとだめかなぁ」
「他の人にアタックしてもいいけど、姫ちゃんはおれらのものでもあるし」
「ん〜でも、すごく好きなんだぁ」
不満を言われても姫野くんは怯みもしない。それはいつもと変わらない。
それにしても、堂々と浮気宣言できる姫野くんも、何股かけられても構わない彼氏さんたちも、すごい。彼らの中では彼らなりの秩序があるのだろうか。
「それはわかるんだけどさぁ……」
「じゃあ、今ここでシていいよ。他のクラスの彼たちには内緒ね」
「えっ! まじ!」
「よっしゃ!」
「姫ちゃん、大好き〜」
姫野くんは人差し指を唇に当て、可愛くウインクする。
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