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急迫4
姫野くんの言葉を聞いて、僕の顔は赤くなるどころか、青くなりそうだ。
何股もかけてるのも理解できないけれど、複数人に同時にされることを自ら提案するなんて。
バクバクと嫌な鼓動に変わっていく。恐ろしくて手が震える。
こういうことをしているから、彼氏さんたちは離れていかないということだろうか。
「そう、た……」
すると急に颯太が立ち上がって五人に歩み寄っていく。
僕は驚いて身動きが取れない。
「ねぇ」
「は? 誰だよ」
颯太は臆すことなく話しかける。
姫野くんに手を伸ばしていた四人は、先と打って変わって怖い表情ですごむ。姫野くんの表情はここからは見えなくなってしまった。
「間宮颯太」
そんな怖い人たちに颯太はきっぱり言った。
「間宮……?」
「颯太……って」
「あの不良か……!」
「な、なんだか知んねーけどじゃーな!」
すると呆気なく四人は退散してしまった。
……まさかまだ颯太の不良の噂が効力があるとは思わなかった。
やはりクラスが離れすぎていると、颯太が普通の人だと広まりづらいのかもしれない。
なんにせよこれで怖い要素はなくなった。
僕は颯太に駆け寄る。
「ちょっと、何してくれんの」
「冷たい口調だな〜。前は好き好き言ってくれたのに」
颯太がへらっと笑って言うと、姫野くんは眉間にしわを寄せた。
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