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急迫6
颯太と一緒に歩いていく。僕の試合は、颯太の試合と同じ第一体育館だ。
「……すごい、人……」
「大丈夫だよ」
体育館を前にして思わず呟く。
入り口からもう熱気がすごい。応援の人たちがたくさん押しかけている。あと多分、十二組の試合に興味がある人たち。
これくらいの人混みに慣れてはきたけれど、待っている出来事のせいか、いやに心臓が脈を打つ。
だけど颯太が優しく背中を撫でてくれて、少し安心した。
階段を登って体育館に足を踏み入れる。Aコートにすぐたどり着く。
もう既に一組の人が何人かいた。
でもそこは応援場所で、僕は選手の集合場所に行かなきゃならない。
「もう少し一緒にいよっか。小室くんのこと待ってよう」
「……うんっ」
颯太が僕を壁際にいざなう。
人混みから一歩遠巻きに、ざわめきや人々の動きを見つめた。
少し落ち着ける場所で静かに深呼吸してみたら、徐々に鼓動が緩やかになってくる。
大丈夫。
勝つことを強要されているわけではない。
自分なりに、頑張る。それだけ。
「しかし俺の名前ってまだ残ってるんだね」
暗示のように考えていると隣の颯太が話し出す。
「極悪不良。夜遊び。目をつけられたら終わり」
「やめてよ」
「懐かしいね」
颯太の顔を下から覗き込んでくすくす笑う。
一組の人からしたらただの優しい人なのに。松村くん曰く僕の旦那らしいけれど……。
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