552 / 961
急迫8
そのうち集合時間になって、審判がそれぞれのチームの人数を確認していく。
ちなみにこの時点で揃っていなかったら失格負けだ。
でも両チームちゃんと揃っていた。
そこからウォーミングアップが始まる。まずはサーブの時間。
「……サーブ」
「どしたの〜?」
「いや、苦手だなって……」
手に持ったボールを見つめる。硬くて大きい、カラフルなボール。
隣の凛くんは不思議そうな顔をする。
「思い切り打てば平気だよ。それ〜」
変わらずふわ〜っとした口調で凛くんはボールを打つ。
相対して勢いよく飛んで行ったボールは、コート後方に落ちた。
「す、すごいね……」
「ほら、亜樹くんも〜」
「えっ……あ、うん。えいっ」
軽く上に投げたボールを拳で打つ。凛くんと異なって見るからに勢いなく飛んでいくボール。
ガッとネットに引っかかり、相手コートに落ちた。
「あ、危ない……」
いつもこんな感じだからひやひやする。だから嫌なんだ、サーブ。
「なんだ、入ってるじゃん〜」
「そうかもしれないけど……」
「ほら、練習しよう。よいしょ〜」
床に転がったボールを一つ僕に手渡した凛くんは、自分の分も拾う。それからまたもや変な掛け声とともにボールを打った。
「ありゃ」
今度は盛大にネットにぶつかって、僕たちのコートへ落ちる。
「ま、こういうときもあるか〜」
「差が激しいね」
「そうなんだよ、いつもそう〜」
凛くんはこともなげに笑う。その様がおかしくって僕も微笑んでしまう。
「確かに、体育の時も……ひっ!」
「わっ!」
会話は、バンッという音に遮られた。
正体はボールが床に打ち付けられる音。相手チームのいかにも強そうな人から、放たれたボール。体育館中に響き渡るんじゃないかってくらい大きい。
「すごいなぁ、あの人」
「……こ、こんなの拾えるかな……」
「あはは、頑張ろ〜」
いっそ凛くんの臆さなさを分けてほしい。改めて十二組の恐ろしさを知ってしまった。
それでも戦うことは決まってしまっている。
とりあえずウォーミングアップを続けていく。そして刻々と試合開始が迫っていった。
ともだちにシェアしよう!