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急迫8

そのうち集合時間になって、審判がそれぞれのチームの人数を確認していく。 ちなみにこの時点で揃っていなかったら失格負けだ。 でも両チームちゃんと揃っていた。 そこからウォーミングアップが始まる。まずはサーブの時間。 「……サーブ」 「どしたの〜?」 「いや、苦手だなって……」 手に持ったボールを見つめる。硬くて大きい、カラフルなボール。 隣の凛くんは不思議そうな顔をする。 「思い切り打てば平気だよ。それ〜」 変わらずふわ〜っとした口調で凛くんはボールを打つ。 相対して勢いよく飛んで行ったボールは、コート後方に落ちた。 「す、すごいね……」 「ほら、亜樹くんも〜」 「えっ……あ、うん。えいっ」 軽く上に投げたボールを拳で打つ。凛くんと異なって見るからに勢いなく飛んでいくボール。 ガッとネットに引っかかり、相手コートに落ちた。 「あ、危ない……」 いつもこんな感じだからひやひやする。だから嫌なんだ、サーブ。 「なんだ、入ってるじゃん〜」 「そうかもしれないけど……」 「ほら、練習しよう。よいしょ〜」 床に転がったボールを一つ僕に手渡した凛くんは、自分の分も拾う。それからまたもや変な掛け声とともにボールを打った。 「ありゃ」 今度は盛大にネットにぶつかって、僕たちのコートへ落ちる。 「ま、こういうときもあるか〜」 「差が激しいね」 「そうなんだよ、いつもそう〜」 凛くんはこともなげに笑う。その様がおかしくって僕も微笑んでしまう。 「確かに、体育の時も……ひっ!」 「わっ!」 会話は、バンッという音に遮られた。 正体はボールが床に打ち付けられる音。相手チームのいかにも強そうな人から、放たれたボール。体育館中に響き渡るんじゃないかってくらい大きい。 「すごいなぁ、あの人」 「……こ、こんなの拾えるかな……」 「あはは、頑張ろ〜」 いっそ凛くんの臆さなさを分けてほしい。改めて十二組の恐ろしさを知ってしまった。 それでも戦うことは決まってしまっている。 とりあえずウォーミングアップを続けていく。そして刻々と試合開始が迫っていった。

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