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焦燥の熱さ5

ピーッと長めに笛が鳴り、試合終了を知らせる。 結果は25-12。 点差は歴然。 サーブがすごい人を中心に点を取られ、差は開く一方だった。そもそもレベルが違う。でも僕たちのチームも最後までめげずに点を取りにいった。 よく頑張ったと思う。 礼をして左右にはける。 応援スペースの颯太のところへ真っ先に行った。他の応援者がお疲れーなんて声をかけてくれるけれど、それには曖昧に返していく。 「颯太っ」 「亜樹、お疲れ様」 「うん」 本当は抱きつきたいところだけど、我慢、我慢。颯太が頭を撫でてくれるからその手に頭を擦り付ける。 「亜樹くん、早い〜」 「お疲れ、凛。渡来もお疲れ」 「たかちゃ〜ん、おれの頭も撫でて〜」 隣にいた轟くんが笑顔で言う。僕がありがとうと返す前に、凛くんが轟くんにだらーっと体重をかける。 轟くんは暑苦しそうに凛くんを押し返す。そしてあからさまに顔を歪める。 「はぁ? やだよ」 「え〜、間宮くんはやってるのに」 「それとこれとは別だろ」 凛くんは唇を尖らせる。 珍しい。凛くんがこういった愛情表現を求めることはあまりない。 いつもたかちゃん、たかちゃんと寄っていくが、ねだる内容は幼馴染同士のって感じだ。 凛くんも気を張り詰めて頑張った。だから甘えたくなったのかもしれない。 「轟くん、凛くん頑張ってたしやってあげなよ」 「渡来」 「ほら〜たかちゃん」 「俺も亜樹に一票」 「間宮」 「たーかちゃん」 凛くんが轟くんを見つめる。 凛くんの方が身長が小さいから必然的に上目遣いだ。凛くんは美人さんって顔立ちだから、きっと素敵な眺めだろうな。 案の定、轟くんはほんのり頬を染める。そして悔しいとも怒りとも取れる微妙な表情を浮かべた。 「仕方ねーな」 「わ〜い」 凛くんのさらさらの髪の毛に轟くんは手を乗せる。途端に頬を紅潮させたまま、どこか嬉しそうな顔をした。 なるほど。どうやら先ほど見せたものが照れ隠しの表情らしい。轟くんは照れ屋さんみたいだ。 でも凛くんのお願いには逆らえないし、結局は嬉しそうだし。 「……可愛いね」 「本当に」 颯太と顔を見合わせて笑う。

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