557 / 961
焦燥の熱さ5
ピーッと長めに笛が鳴り、試合終了を知らせる。
結果は25-12。
点差は歴然。
サーブがすごい人を中心に点を取られ、差は開く一方だった。そもそもレベルが違う。でも僕たちのチームも最後までめげずに点を取りにいった。
よく頑張ったと思う。
礼をして左右にはける。
応援スペースの颯太のところへ真っ先に行った。他の応援者がお疲れーなんて声をかけてくれるけれど、それには曖昧に返していく。
「颯太っ」
「亜樹、お疲れ様」
「うん」
本当は抱きつきたいところだけど、我慢、我慢。颯太が頭を撫でてくれるからその手に頭を擦り付ける。
「亜樹くん、早い〜」
「お疲れ、凛。渡来もお疲れ」
「たかちゃ〜ん、おれの頭も撫でて〜」
隣にいた轟くんが笑顔で言う。僕がありがとうと返す前に、凛くんが轟くんにだらーっと体重をかける。
轟くんは暑苦しそうに凛くんを押し返す。そしてあからさまに顔を歪める。
「はぁ? やだよ」
「え〜、間宮くんはやってるのに」
「それとこれとは別だろ」
凛くんは唇を尖らせる。
珍しい。凛くんがこういった愛情表現を求めることはあまりない。
いつもたかちゃん、たかちゃんと寄っていくが、ねだる内容は幼馴染同士のって感じだ。
凛くんも気を張り詰めて頑張った。だから甘えたくなったのかもしれない。
「轟くん、凛くん頑張ってたしやってあげなよ」
「渡来」
「ほら〜たかちゃん」
「俺も亜樹に一票」
「間宮」
「たーかちゃん」
凛くんが轟くんを見つめる。
凛くんの方が身長が小さいから必然的に上目遣いだ。凛くんは美人さんって顔立ちだから、きっと素敵な眺めだろうな。
案の定、轟くんはほんのり頬を染める。そして悔しいとも怒りとも取れる微妙な表情を浮かべた。
「仕方ねーな」
「わ〜い」
凛くんのさらさらの髪の毛に轟くんは手を乗せる。途端に頬を紅潮させたまま、どこか嬉しそうな顔をした。
なるほど。どうやら先ほど見せたものが照れ隠しの表情らしい。轟くんは照れ屋さんみたいだ。
でも凛くんのお願いには逆らえないし、結局は嬉しそうだし。
「……可愛いね」
「本当に」
颯太と顔を見合わせて笑う。
ともだちにシェアしよう!