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焦燥の熱さ6

二人のことを微笑ましく眺めていると、颯太が僕を見る。 「もう一回撫でてあげよっか?」 「ううん、もういい」 「そう?」 「……あの、ね」 颯太の言葉は凄く魅力的だ。できればずっと撫でていて欲しいくらい。 でもそうすると我慢できなくなっちゃうから。抱きつきたくなっちゃうし、キスだってしたくなっちゃう。 颯太の体育着の裾を掴む。 「……家でいっぱい……甘えたい」 颯太を見つめると、嬉しそうに笑んだ。そして両手を動かしかけて、止める。それから片手を僕の頬に滑らせた。 「抱きしめたくなっちゃうでしょ」 「ふふ、ごめんなさい」 「まあでも亜樹、頑張ってたしね。特にあの陰険野郎のボール打ち上げた時。だからいっぱい甘やかしてあげる」 陰険野郎ってところで颯太の顔が恐ろしい形相になった気がする。でも頬の感触の心地よさですぐ忘れてしまった。 颯太の親指が頬のあたりをすりすり擦る。くすぐったくなって肩をあげて逃げる。 手はついてきて、頬から顎にかけて撫であげる。 指はそのまま僕の顎を持ち上げ、視線が絡み合う。 「ご褒美もちゃんとあげるね」 「ご褒美……って結局何?」 「それは秘密。また今度ね」 「なにそれ」 「はいはい、お二人さん」 颯太とまた微笑みあっていると隣から轟くんの声。 呆れた笑顔を浮かべながら僕らを見ている。凛くんはにやにやしていた。 「ラブラブなのはいいことだけど、そろそろ清水と松村の応援行くぞ」 「そっか。次か」 「そうだよ、間宮くん〜」 「小室くんの表情含みありすぎ」 その言葉にその場の全員が思わず笑う。 それから四人で試合の応援に繰り出していった。

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