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心待ちと1

ぐる、ぐる、ぐる。 ……懐かしい、この感じ。 目を開ける。視界が回っていた。 球技大会が終わって、正常な日々が続いていたのに。というより、しばらく起こらなかったから直ったとばかり思っていた。 何度起こっても思うことだけど、物凄く気持ち悪い。 体を無理やり動かして窓まで這っていく。カーテンに手をかけ、窓の鍵を開け、思い切り開け放つ。 そしてかつてのように窓枠にもたれて座った。 これじゃあコウと出会った頃と同じだ。考えてみれば、もう出逢ってから一年も経つ。 一年……って、あっという間だった。 窓から落ちて、コウと出会って。恋して、嘘に戸惑って、絶望して。付き合うことになって、喧嘩して、九条から逃げて、向き合って。クラスで騒いで、旅行にも行って。初詣も、沖縄も、行って。三年生になって、 そして、それから、僕らは、 「……っ」 酷くなるめまいに思わず目を瞑る。 僕は、ただ颯太と一緒にいられたら、幸せなんだ。颯太は僕の救世主で、王子様で、大好きな人で。 だから僕は颯太と一緒にいられたら、しあわせ、なのに。 波がおさまってきた頃にそっと目を開ける。 驚きで、目が大きくなった。 今日は満月。でもその光は、遮られている。 「こんばんは、亜樹」 「……そ、うた……」 あの時のように颯太が目の前にいた。 背に光を受けた、神秘的な、彼。 颯太は微笑みながら僕の隣に座る。そしてゆっくり僕の頭を自身の方にもたれさせた。 「なんか呼ばれたような気がした」 「え? 呼ばれた……?」 「というのは半分嘘。出会ってから一年過ぎたなぁ〜って思って、来てみた」 「……うん、そうだね」 毎日学校で会って、土日もよく一緒にいるのに、わざわざ夜中に会う必要はない。だから夜中に会うのは本当に久しぶりだ。 颯太も出会った時のことを思い出してくれていたようだし、嬉しい。 めまいも、悪くないかも。

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