561 / 961
心待ちと1
ぐる、ぐる、ぐる。
……懐かしい、この感じ。
目を開ける。視界が回っていた。
球技大会が終わって、正常な日々が続いていたのに。というより、しばらく起こらなかったから直ったとばかり思っていた。
何度起こっても思うことだけど、物凄く気持ち悪い。
体を無理やり動かして窓まで這っていく。カーテンに手をかけ、窓の鍵を開け、思い切り開け放つ。
そしてかつてのように窓枠にもたれて座った。
これじゃあコウと出会った頃と同じだ。考えてみれば、もう出逢ってから一年も経つ。
一年……って、あっという間だった。
窓から落ちて、コウと出会って。恋して、嘘に戸惑って、絶望して。付き合うことになって、喧嘩して、九条から逃げて、向き合って。クラスで騒いで、旅行にも行って。初詣も、沖縄も、行って。三年生になって、
そして、それから、僕らは、
「……っ」
酷くなるめまいに思わず目を瞑る。
僕は、ただ颯太と一緒にいられたら、幸せなんだ。颯太は僕の救世主で、王子様で、大好きな人で。
だから僕は颯太と一緒にいられたら、しあわせ、なのに。
波がおさまってきた頃にそっと目を開ける。
驚きで、目が大きくなった。
今日は満月。でもその光は、遮られている。
「こんばんは、亜樹」
「……そ、うた……」
あの時のように颯太が目の前にいた。
背に光を受けた、神秘的な、彼。
颯太は微笑みながら僕の隣に座る。そしてゆっくり僕の頭を自身の方にもたれさせた。
「なんか呼ばれたような気がした」
「え? 呼ばれた……?」
「というのは半分嘘。出会ってから一年過ぎたなぁ〜って思って、来てみた」
「……うん、そうだね」
毎日学校で会って、土日もよく一緒にいるのに、わざわざ夜中に会う必要はない。だから夜中に会うのは本当に久しぶりだ。
颯太も出会った時のことを思い出してくれていたようだし、嬉しい。
めまいも、悪くないかも。
ともだちにシェアしよう!