566 / 961
群青色の迷彩2
外は雲の多い晴れ空だ。太陽が見え隠れしていても、六月ともなると蒸し暑い。
「暑いね」
「でもこれから行くところは視界だけでも涼しそうだね」
「うん」
最初の目的地は歩いて行けるところだ。
近くにあったのに全然気づかなかった。まあ僕は颯太と出会うまで、そういったスポットに全く興味がなかったから仕方ない。勉強しかしてなかったのだから。
「あーき」
「颯太?」
「ふふ、嬉しいなって」
「……僕も、嬉しい」
颯太が腰を屈めて僕を見つめる。それから目を細めて、手を掴んできた。
僕の小さい手は颯太の掌にすっぽり包まれてしまう。
「あ、だめだよ……」
「大丈夫。人の少ない道通って行こう」
「……うん」
甘い甘い誘惑に僕は勝てなかった。今日くらい、デートの日くらい、いいよねって、何回思うのだろう。
ちょっと狡いけれど、仕方ない。
自然と恋人つなぎになる。そうなるとどうしようもなく幸福を感じた。
「こうやって手を繋ぐのも、出かけるのも、たくさんしたよね」
「もう数えきれないね」
「うん。だけどいつまでも亜樹への想いは冷めない。寧ろ日に日に増していく。どうしてくれんの」
「えっ! えー……そ、そんなの……」
空いた右手で頬に触れる。熱い。
だって増している、とか。嬉しすぎる。でもそんなの、僕のせいだけど、せいじゃないし。そもそも大歓迎だし……。
颯太はいたずらっぽく笑んだ。
掌から伝わる熱は、何よりも心地よかった。
ともだちにシェアしよう!