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群青色の迷彩2

外は雲の多い晴れ空だ。太陽が見え隠れしていても、六月ともなると蒸し暑い。 「暑いね」 「でもこれから行くところは視界だけでも涼しそうだね」 「うん」 最初の目的地は歩いて行けるところだ。 近くにあったのに全然気づかなかった。まあ僕は颯太と出会うまで、そういったスポットに全く興味がなかったから仕方ない。勉強しかしてなかったのだから。 「あーき」 「颯太?」 「ふふ、嬉しいなって」 「……僕も、嬉しい」 颯太が腰を屈めて僕を見つめる。それから目を細めて、手を掴んできた。 僕の小さい手は颯太の掌にすっぽり包まれてしまう。 「あ、だめだよ……」 「大丈夫。人の少ない道通って行こう」 「……うん」 甘い甘い誘惑に僕は勝てなかった。今日くらい、デートの日くらい、いいよねって、何回思うのだろう。 ちょっと狡いけれど、仕方ない。 自然と恋人つなぎになる。そうなるとどうしようもなく幸福を感じた。 「こうやって手を繋ぐのも、出かけるのも、たくさんしたよね」 「もう数えきれないね」 「うん。だけどいつまでも亜樹への想いは冷めない。寧ろ日に日に増していく。どうしてくれんの」 「えっ! えー……そ、そんなの……」 空いた右手で頬に触れる。熱い。 だって増している、とか。嬉しすぎる。でもそんなの、僕のせいだけど、せいじゃないし。そもそも大歓迎だし……。 颯太はいたずらっぽく笑んだ。 掌から伝わる熱は、何よりも心地よかった。

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