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群青色の迷彩3

「わぁ、綺麗……!」 目的地について、思わず声を上げてしまう。 そこには一面、紫陽花が広がっていた。様々な色の紫陽花は、ちょうど見頃を迎え、鮮やかに咲き誇っている。 そう、目的地は紫陽花スポットだ。梅雨の時期になると綺麗に咲くらしく、近隣の人にはそこそこ有名な場所。でも遠方から人が来るほど大規模ではないから、人の量がちょうどいい。 僕にはありがたい。だから行きたいねって二人の意見が一致した。 「こうして見ると、紫陽花って色の数多いんだね」 「うん……カラフルで素敵だね」 「そうだね。壮観」 青、紫、桃、白といった丸い塊がポツポツ浮かぶ。 道に沿って僕と颯太は進みだした。 手が離れた寂しさは、紫陽花の美しさが補ってくれる。どこを見ても綺麗で、僕は感動の渦に包まれてしまう。 昨日は雨が降っていたみたいで、水滴が太陽の光を受けて煌めいている。 まるで水晶のようだ。うっすら葉の緑を透けさせている様は、本当に美しい。 人影もなくて、魔法の園に来ているみたいだ。僕らのためだけの園。 「亜樹は綺麗なものが好きだね。イルミネーションの時も大喜びだったし」 「うん……。神秘的な感じが好き。……あっ」 「ん?」 慌てて颯太を見上げて、服の裾を掴む。 「……颯太は、嫌い? あんまり、面白くない?」 「何言ってるの」 颯太はくしゃって笑うと、僕の頭を撫でた。愛しさが溢れるその表情。 「亜樹と行く場所はどこでも好き。それにこういう場所は心が落ち着くし、普通に好きだよ」 「よかった……」 「嫌だったら流石に言うからね?」 「ごめんなひゃい」 颯太が頭の手を頬に滑らせてむにって引っ張る。痛い。 痛いけど、愛しい。

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