571 / 961

ショッピング1

紫陽花園を出たあと、僕らは街中へ向かった。とりあえず一つのビルに入る。 「まだ昼には早いね」 「うーん、どうしよっか」 じっくり紫陽花を見て回ったが、まだお腹が空く時間ではなかった。いろいろお店を見て回れば済むことだ。 「あ、そうだ」 「へ?」 「こっち」 颯太は僕を促してエスカレーターに乗る。その際に当然のごとく颯太が後ろに乗った。 そのまま二階を過ぎて、三階にたどり着く。颯太はそこで降りた。 この階は、見るからに……。 「ゲームコーナー……?」 「そう」 僕の目の前にはガチャガチャとした雰囲気が広がる。様々なゲームが設置された区画で、休日だからか人の数もそこそこ。 コスプレ……だろうか。明るい色のセーラー服を着たお姉さんが呼び込みをしている。 ゲームコーナーを見ると、颯太と前に行ったときを思い出す。颯太がリスを取ってくれたんだ。ちゃんと僕の部屋にいる。 「ゲームやるの?」 「今日はこっち」 可愛らしいお姉さんの声を横に、僕らは奥へ向かう。僕には全くわからないゲーム機の列を抜け、颯太が向かったのは、僕には、臆してしまう場所。 流石に僕でも何かはわかる。女性の顔が大きくプリントされた四角形の機械。女の子がいっぱいいる、キラキラしたところ。 そう、プリクラブース。 「そ、颯太……行くの?」 「亜樹と撮ったことなかったなあって」 「で、で、でも……」 焦りでかなりどもってしまう。 だって男子禁制感が溢れている。 そこに行く勇気は僕には、ない……。 ふっと目をそらす。その先にとある看板。 「颯太、あれ」 「あー……」

ともだちにシェアしよう!