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ショッピング6

「……? 仁くん!」 聞き覚えのある声。そう思って顔を向けると、そこには可愛い後輩が立っていた。 ジャージを着ているから部活前なのかもしれない。レストラン街だと少し違和感があるけれど。 「わーやっぱり亜樹先輩だ!」 「やっぱり?」 仁くんは輝かしい笑顔でパタパタ僕に駆け寄ってくる。さりげなく僕の手を取って上下に振ってきた。 「亜樹先輩っぽい人がいる! って思って、思わず追いかけちゃいました」 「そうなんだ。わざわざ追いかけてくれたんだね」 「まあ途中で見失って、昼時だしって八階目指したら本当にいたってオチですけど」 仁くんはえへへって笑う。 普通見かけた気がするだけでここまでしてくれない。優しい。可愛い。 それに途中で見失ったってことは、颯太といるところを見られていないかもしれない。別に友人同士だと言えば済むことだ。でも友人だと口にするのは嫌だし、そもそも距離感などでバレてしまいそうな気もするし。 「人待ちですか?」 「あ、うん。トイレ行ってるんだ」 「なるほど! あ! この前言ってたデート?」 「詮索はよくないよ」 「亜樹先輩のけち〜」 苦笑して言い返すと仁くんは楽しそうに笑った。 僕の恋愛事情を知って仁くんは楽しいのだろうか。同性だということを抜けば、何の変哲も無い凡人の恋愛模様だ。 仁くんは好奇心旺盛だから、何にでも興味が湧くのかもしれない。 「あ、もうこんな時間!」 仁くんがスマホを見て叫ぶ。 「亜樹先輩、じゃあ部活行ってきます! ちょっとでも話せて嬉しかったです!」 「うん。僕も楽しかった。行ってらっしゃい」 「ありがとうございます!さようなら!」 「ばいばい」 俊足で走り去る仁くんの背を見つめる。 ここから学校はそこまで離れていないし、間に合うはずだ。 背が見えなくなるまで追ってから、壁際に戻る。

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