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ご褒美2
「お邪魔します」
俺がドアを開けて亜樹を通す。遠慮なく進んでいく亜樹は、もうすっかり勝手知ったるなんとやらという感じだ。
お互いの家を何度行き来したかわからないほどだから、流石に亜樹も慣れるのだろう。
「麦茶入れる?」
「早く渡したいから俺の部屋行こう」
「渡す方のくせにわくわくしすぎ」
キッチンに向かいかけていた脚を俺の方に変え、亜樹はニコニコ俺の顔を見てくる。
「だって亜樹の喜ぶ顔が早く見たい」
半分嘘、半分本当。
亜樹の唇にキスを落とす。家の中だから亜樹は素直に微笑んだ。
「じゃあ行こ」
「お手をどうぞ、お姫様」
ふざけてお辞儀をすると、亜樹はこそばゆそうに笑って、素直に左手を俺の手に乗せた。薬指が光る。
俺と亜樹は短い距離をなぜか手を繋いで歩き、無事部屋に辿り着く。
ソファに座った亜樹を確認してから、クローゼットを漁る。
最近はここの中にも物が増えた。前は寝具類が保管してあるくらいだったが、今では洋服ダンスが入った。他にも諸々の物を入れる棚だったりとか。
バングルを丁寧に外してその棚に置く。それからあらかじめ包装してあったそれを取り出した。
「はい、亜樹。球技大会よく頑張りました」
「ありがとうございます」
「すぐ開けてください」
「はい」
亜樹はやっぱり可笑しそうに笑いながら、素直に包装を剥いでいく。俺からのプレゼント、いや、亜樹は誰から貰ってもそうなのだろう。
丁寧に、綺麗に、包装を剥がす。
その姿は可愛いというより、美しいだった。さりげない所作が最近は美しく見える気がする。亜樹が大人に近づいたのだろうか。
もしくは儚さを纏っているからだろうか。
「よし……開いた」
だが思わず独り言を言ってしまう様子を見ると、やはり可愛いが勝る。
大事を成し遂げたかのような亜樹が取り出したのは、ピンク色のもの。
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