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ご褒美11
目の前ではすやすや寝息を立てる亜樹。
理性を失った俺に亜樹が付いてこられるはずもなく、途中で気を失ってしまった。俺が一回イッたあたりかもしれない。
流石に寝ながらなどしたくないので、まだ興奮したままの自分を虚しく慰めた。
あとは亜樹の体を綺麗にして、寝るだけ。
濡れタオルを用意しようと立ち上がった時、自分の手に光を見出す。
「あ……つけたままか」
左手の薬指の指輪を外す。
安物だから多少汚れても拭けばいいだろうと、そこまで気にならない。いずれ亜樹にはもっと高いものを買うつもりだ。
亜樹の手からも指輪を取る。そしてローテーブルに並べた。
下だけ履いてキッチンに向かう。
指輪をあげたのは去年のクリスマス。もう半年も前のことだ。
あの時、亜樹は泣きながら喜んだ。あの時、俺は亜樹の不安を解消しようとした。
ぬるま湯につけたタオルをぎゅっと絞る。それから部屋に戻った。
亜樹の体を優しく拭いていく。亜樹は少し身じろぐが、起きる気配はない。
あれから何か変わったかといえば、変わった。解決したかといえば、解決していない。
あの日を境に亜樹は悩む姿から、無理をする姿に変わった。俺には何を悩んでいるのかわからない。何を無理しているかもわからない。
大事な人のことをわかってあげられない、最低な彼氏だ。
少なくとも受験のストレスではない。紫陽花園で聞いた時の様子ではっきりわかった。試すような質問をして申し訳ない。
きっと亜樹に聞いても、答えてくれないだろうし、打つ手がない。
「亜樹……」
タオルをローテーブルに置いて、汗で張り付いた前髪を避ける。
「何があっても、俺が守るよ」
その華奢な体を抱きしめて。
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