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きよみずの清さ4
「今日帰るの遅くなっちゃって、そしたら先生に都合よく任されちゃったんだよね。教室にはもう誰も残ってなくて、一人でこんなに持ってきたの! でも蓮くんに会えたからラッキー」
「前見て歩かないとまた転ぶぞ」
「うふふ〜、優しい!」
俺の顔を見てニコニコする姫野。俺はその顔を見ないで前だけを見る。
ちょうど廊下の突き当たりが見えてきたときだ。二人の人物がそこを横切るのが目に入る。
それは渡来と、もう一人の男。間宮ではない。
「あれ……」
「どうしたの?」
「……いや、なんでもない」
一瞬驚いた俺だが、姫野の声にすぐ現実を思い出す。今はこいつとの時間を早く終わらせることが懸命だ。
それに先ほどのはきっと見間違いだろう。
そう思いつつ、渡来たちが向かった方向とは逆に曲がる。
目的地に着くと最後だけは全て持たせて姫野を入らせる。
他クラスのやつに手伝わせたのかなんて非難する教師もいるにはいるから。
俺はここで帰ってもよかったのだが、別れの挨拶もせずに行くのは気が引けた。こういうところがいけない。嫌いなやつならそれくらいやってもいいはずなのに。
少し待っていると姫野は職員室から出てきた。
「あれ! 蓮くん待っててくれたんだ!」
姫野は嬉しそうに俺の腕に抱きついた。俺はそれを手早く剥がす。
そしてふと気づく。この場合、一緒に帰ることになってしまうのではないか。そもそも姫野のことだから送って〜なんて言ってきそうだ。
「優しいな、やっぱり!」
「そんなことねーよ」
「今日は本当にありがとうね、助かったよ! じゃあ、ばいばい!」
「……ん、おう。じゃあな」
しかし姫野はあっさりと手を振って去っていく。俺にとっては嬉しい誤算だ。だがとても意外でもある。
もしかしたらこの後、誰かの相手をするのかもしれない。
ふと浮かんできた理由にも、それを思いついた自分にも、酷く不快感を覚えた。
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