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清水家の人々3
「亜樹くん!? どうしてここにいるの!? まさかあたしに会いに!?」
「あっ……えっと」
杏ちゃんが目をキラキラ輝かせて僕に駆け寄ってくる。
「はは。亜樹先輩を好きになった三兄弟が全員揃いましたね」
「仁、面白がんな」
「怒らないでよ、俺がバラしたからって」
「ねね、亜樹くん、どうして!どうして!?」
仁くんたちの話も聞こえるし、目の前の杏ちゃんは僕の手を取って弾む声を掛けてくるし、もう僕の頭は収集がつかない。
すると清水くんがはぁーっと大きく大きく溜め息を吐いた。
「杏、仁、とりあえずこっち座れ。渡来はそっちな」
「はーい」
「はいはい」
「あ、わかった」
清水くんの指示のもと、席順が並べ替えられる。清水くんの両隣に杏ちゃん、仁くん。僕は清水くんの真向かい。
清水家対僕の構図みたいだ。
「もうバレちまったもんは仕方ないから隠さないけど、俺は渡来のことが好きだ。仁も好きだし、杏も好き」
「……うん」
「え!? お兄ちゃんたちもなの!?」
「そうだよ、杏。アタックしたのは杏が一番先だけどね」
「ライバルがこんな近くに……!」
三人揃うと賑やかだなぁ、なんて現実逃避のように考える。
でも本当に、そうなんだ。みんな好きなんだ。清水家揃って、僕のこと。物好きというか、なんというか。
「……まあ、とりあえず間宮呼ぶか」
「えっ、颯太?」
「ちゃんと言わないとだろ」
「う、うん……」
よく考えてみたら僕、危ない気がする。杏ちゃんのことは知っているからいいけれど、仁くんのことはずっと隠していたわけだし。
仁くんにそんな気はないって思っていたからこそだけど。
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