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清水家の人々4
清水くんがスマホをいじって颯太に連絡する。何を書いたのだろう。書き方によっては更に状況が悪化する。いや、清水くんはそんなことしないと思うけれど。
「ねーねー、どうしてお兄ちゃんたちは亜樹くんのこと好きになったの? はい、仁にい」
「本人の前で答えさせる?」
「いいじゃん! 聞きたいよ〜!」
ビシッと掌で示された仁くん。仁くんは僕の顔を見つめる。そして口角を上げた。
「一目ぼれ、かな。俺好みの顔していたし、可愛かったし」
「なるほど〜!! でも亜樹くんは可愛いだけじゃなくて、かっこいいんだよ!」
「はいはい」
「じゃあ次、蓮にい」
「俺もかよ……」
やれやれと清水くんは首を振る。本人の前で惚れた理由なんて普通は恥ずかしい。僕も颯太の前で言うとなると絶対に真っ赤になってしまう。
でも清水くんが僕を好きになってくれた理由、少し気になる。なんでだろう。出会いは最悪だったのに。
清水くんを思わず見つめてしまう僕。清水くんは諦めたように僕を見た。
「きっかけは、何だったんだろうな。見張る目的で渡来のこと見始めて、笑顔が可愛かったって言うか。いつの間にか目が離せなくなってた。守りたいって思うようになった」
「清水くん……」
「ひゅーひゅー」
「きゃー! 蓮にい素敵!」
「茶化すな!」
そんなところに惹かれてくれたんだ。僕はただただ怯えていただけなのに、その頃から清水くんはずっと。
でもその頃から僕には、相手がいた。
「でも蓮にいも仁にいもあたしのライバルってことに変わりないわ!」
照れる清水くんと平然とした仁くんを見て、杏ちゃんが叫ぶ。
そこでふと気づく。
杏ちゃんは男同士だということを気にしないのだろうか。単に恋敵が現れたことに夢中になっているだけか、それとも元から偏見がない子か。後者だと嬉しいけれど。
だってこれから颯太が来るし、そうなったら恋人同士だと告白する以外の道はないだろうし。
なんて考えていたら、バンッと玄関の開く音がする。
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