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清水家の人々6

「とりあえず間宮も座れよ」 「……うん」 「杏も一旦落ち着こうな」 「わかったー」 短時間で疲れ切ってしまった颯太は椅子に深く腰掛ける。僕は額に張り付いた髪の毛をよけてあげる。 僕のせいでこんな負担をかけてしまった。 「ありがとう、亜樹」 「心配かけてごめんね」 「うん、それは許してないよ」 「えっ」 「まあまずは事の次第を聞いてからかな」 颯太の整いすぎた笑顔。うん、これは結構怒っている時。 そりゃ、そうだ……。 颯太は僕から前に視線を移す。 「知っていることと知らないことが、人によって違うから、一つ一つ片付けていくか。まず俺は杏のことが知りたいんだけど」 「ああ、俺と亜樹と杏ちゃんが知り合いな理由とか?」 「そこら辺も含めて」 「うーんと……」 颯太があの時のことを話し出す。 僕が公園で杏ちゃんと仁くんと出会って、杏ちゃんと偶然の再会をした。そしてショッピングモールでデートをして、その時に颯太と会ったこと。告白の部分は杏ちゃんの様子を見て、簡単に述べていた。 「なるほどな……だから間宮とも知り合いなのか。そしてこれを仁は俺に隠したと」 「俺はその弟くんのことが知りたいな」 「まあ、俺も気になってる。仁、洗いざらい話せ」 「仕方ないなぁ」 颯太はもちろん厳しい視線を向けているし、清水くんも結構怒っているの、かな。確かに優しい人だから、まだ無理やりやろうとしたことに怒っていても無理はない。 しかし仁くんは恐れた様子を欠片も見せない。 「俺が公園で亜樹先輩に一目惚れして、そこから同じ高校を目指すようになりました……」 仁くんは丁寧に話していった。

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