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清水家の人々8

「亜樹先輩は手強かったですね」 「当たり前でしょ。俺が相手なんだから」 「ははっ、自信満々。苛立たしい人〜」 怖い、怖い。 颯太と仁くんの間に静かに火花が散っている。 「はいはい、落ち着け」 「あ、ちなみに兄さんが亜樹先輩を好きな事実も、本人に今日バレましたよ」 「……そう」 清水くんの言葉に、仁くんは更に掻き混ぜようとしてか、そんな言葉を挟む。 だけど颯太は全く驚かない。仁くんも驚かない。 「……颯太、驚かないの?」 「だって知ってたよ」 「え!」 颯太の目の前で目を見開く。それから仁くん、清水くんと見ていく。みんな驚いていない。 つまり清水くんが僕を好きなことも、それが恋人にバレていることも、全てわかっていたということだ。 僕だけ、何も知らなかった。 「亜樹はそういう面、鈍感だからねぇ」 「き、気づかないよ、そんなの……」 「素直だもんね」 唇を少し尖らせていると颯太が頭を撫でてくる。その手は純粋に心地よかった。 同時に安心したのか、疲れもどっと襲ってくる。 「もうみんなわからないことはないよね? なんか色々あって疲れちゃったから、俺ら帰ってもいい?」 颯太も同じ気持ちでいたようだ。僕の代わりにそう言いだしてくれる。 「ああ。色々ごめんな」 「ううん、それは別に」 僕と颯太は立ち上がって玄関に向かう。 三人はそこまでついてきてくれた。流石に仁くんも今は何かことを起こそうとする気はないようだ。 三人に見守られて、僕らは清水家を出る。

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