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しおき1
家を出て、塀の間を抜けて、道路に出る。隣の颯太を見ることができない。
「……色々聞きたいことはあるんだけど、今は帰ろうか」
「……う、うん」
恐る恐る視線を向ければ、颯太はシワひとつない綺麗な笑顔を浮かべている。
怒っている……よなぁ。
隠し事をして、挙句襲われかけるなんて、怒るに決まっている。颯太のことだから僕の行動理由とか理解したとは思うけれど、それとこれとは別問題だ。
「今日は亜樹の家ね」
「あ、うん」
「久志さんに声聞かれたいなら別だけど」
「えっ、や、やだ」
「俺も嫌」
淡々と喋る颯太。
声を聞かれるってことは、やっぱりそういうこと、するんだ。
心臓が強く鼓動し始める。でも声には出せず、ただ二人並んで歩いていった。
電車に乗って最寄り駅まで行って、歩いて僕の家に向かって。
颯太はこれくらいの距離をずっと走ってきてくれたんだ。
道を進むにつれて恐怖より罪悪感が大きくなる。汗だくの姿が頭に思い浮かぶ。
「……颯太、用事は……?」
「ああ。それは済ませたあとだったから」
「……そっか、よかった」
颯太と一緒に帰ることになっていれば、今回のことは起こらなかったと考えるとなんともタイミングが悪い。だが今日でなくてもいずれは起こったことか。
そうこうしているうちに僕の家に着く。
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