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しおき2
鍵を開け、玄関の中へ。
すると、
「ひゃっ!」
いきなり体がぐわっと持ち上がる。慌てて僕は颯太の体に抱きついた。
だってこれは、お姫様抱っこってやつ。前もしてもらったけど、恥ずかしい。それに重くないかとか、女の子みたいな心配事が湧いてしまう。
「じ、自分で歩けるよ」
「姫さまを連行しないと、ベッドにね」
「……っ」
そんなことを言われたら僕は逆らえず、落ちないように颯太にしがみついた。そしてもちろんそのまま僕の部屋の、布団の上に連れていかれる。
ふわっと下ろされ、体が布団に沈む。
僕の心臓はバクバク言い出す。
何をされるのだろう。颯太はどれくらい怒っているのかな。
怖いけれど、恐怖だけではない自分がいて。
物凄く、恥ずかしい。
「ねぇ、亜樹。まずはなんで隠していたか聞きたいんだけど」
颯太は笑顔で僕の前に座る。僕もぺたんと座ったまま颯太を見る。
「仁くんも言ってたけど……内緒にしてくださいって言われたから」
「俺より後輩を優先したんだね」
「そ、そんなつもりはっ……」
「でもさぁ、勉強会内緒ってことは普通友人にバレたくないって考えない? てことは俺に話しても平気だったと思うんだけど」
その言葉にハッとなる。
確かに。僕も途中まで同じこと考えて、なぜか誰にも話しちゃいけないと思ってしまった。でも普通に考えれば同学年でなければ平気だったろう。まして二つも離れているし。
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