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しおき3

「言ってくれていたら、今回のこと未然に防げたかもしれないし」 「ごめんなさい……」 「初めてできた後輩で、しかもすごくいい子で、嬉しかったのはわかる。あの子どうやら演技も上手いみたいだし」 颯太が床に手をついて、僕に迫る。 「でも、本当に聞きたいことは今から」 「……は、はい」 「どうして他の男の家に行ったの?」 「や、本……が……」 「うん。夢中になっちゃったんだよね。あの子もそれを見越していたんだろうね。でも、もう少し考えない? 襲われる可能性とか」 颯太の手がするりと頬に触れる。それだけでゾクゾクとした感覚が体を貫く。 無意識に脚をもじもじさせてしまう。 「仁くんは後輩、だったし……いい子だった、から……」 「襲う相手として見てなかった、か。でも亜樹は可愛いから、狙う男いっぱいいるんだよ?」 「……でも」 「でもじゃない」 颯太は僕のネクタイを外す。 普通仲のいい子が襲ってくるなんて、考えない。道端で声をかけられて、ならあるけれど。でもその考えは今日覆されてしまった。 それに颯太が怒るのももっともなこと。恋人が他の人に迫られるなんて、嫌だもん。下田さんの時、すごく嫌だった。 「だから今日は、俺のことしっかり覚えさせてあげる。他の男についていこうなんて思わないくらい」 「……へ?」 颯太は外したネクタイを、僕の顔に巻きつける。後頭部で縛られて、僕の視界は真っ暗になった。 「解いちゃダメだよ。これはお仕置き」 「おし、おき……」 「そう」 とんっと肩を押されて僕の背中は布団に沈んだ。

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