615 / 961

しおき10

「ごめ、なさ……もうしない……そうたが、いい……そうたしかだめ、なの……」 「うん……亜樹、意地悪してごめん」 「そうた……」 これでもかと言うほどきつく抱きつく。颯太は僕の背に腕を回し、抱き起こしてくれた。 触れ合う肌が心地いい。伝わる熱も、心地いい。 えぐえぐ泣いて、僕は颯太の名前を何度も呼んだ。 「……亜樹、泣き止んでよ。ごめんね、亜樹」 「……そうた……そうた」 颯太は少しおろおろとしつつ声を出す。 意地悪はいつもしていることだからここまで泣くとは思っていなかったのだろう。僕自身、こんな泣くとは思っていなかった。 でもとにかく涙が止まらない。颯太が見えない。それだけでこんなにも悲しいとは知らなかった。 「……今日はもうやめよっか」 颯太は優しく僕の頭を撫でて、背中をとんとんって叩く。 僕は颯太に抱きついたまま首を左右に振った。 「……や、そうた見て、シたい……」 「亜樹……それは反則なんだけど」 颯太のが硬くなった。ひっついているからよくわかる。 「……そうた、来て」 「……ああもう。どうなっても知らないよ?」 颯太が再び僕を押し倒す。 そしてその日は、夜まで深く深く愛しあったのだった──

ともだちにシェアしよう!