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凛々奮闘記3

--- 『少し付いてきてほしい』 妙に緊張した顔でたかちゃんは言っていた。そして連れてこられたのは河原だった。 小さい頃によく連れてきてもらった場所。ちょっと変で、友達がいなかったおれにたかちゃんはいつも笑顔を向けてくれた。 懐かしいこの場所に連れてきたのはなぜだろう。 たかちゃんはおれに背を向けたままで、何も言わない。その雰囲気に声をかけることをためらってしまう。 「……あのさ」 「なぁに?」 振り返る、たかちゃんが。 「…………」 その顔がとても辛そうで、おれにはわけがわからなかった。 でも、たかちゃんのその顔を見ていると、おれもとても辛い。それだけは確か。 「ごめん……」 「な、にが……?」 「悩んでも、わからなかった……」 「たかちゃん……?」 悩んでもとは、何を、だろう。少なくともおれに関することで、たかちゃんは頭を悩ましている。 こんなに悩ませるほどの迷惑をかける関係ではもうない。ならば相手を悲しませる悩み、かもしれない。 ……例えば引っ越し、とか。たかちゃんの家は賃貸ではないけれど、可能性はあるのかもしれない。 「ごめん、凛……もう、会わない」 「た、か……ちゃん……?」 小さく絞り出されたのはそんな声で、考えが当たっていたのだと知らされる。 脳が、揺さぶられる。

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