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凛々奮闘記4
「や、やだっ……」
「でも……」
思わずたかちゃんの肩を掴んでしまう。たかちゃんは痛そうに顔を歪める。
「違う、わかってる……仕方ないことだって、でも……やだ、離れたくない……」
「凛……」
「せめて、引っ越し前までは一緒に、いてよ……」
涙がこぼれそうだった。
だから俯いてたかちゃんの胸に顔を埋める。
「……は?」
「……え?」
だけどたかちゃんが発した妙な声におれは顔を上げた。
先の悲痛さはどこへやら。頭の上に疑問符を浮かべまくっている。
「引っ越さないけど」
「……え? でもさっき……」
会えない、ではない。会わないと言った。そういえば。
勘違い、だ。会えないわけではないんだ。
気づいたおれは喜びよりも怒りが湧く。
会わないという言葉の選択にそう思うのも無理はないだろう。
「なんで会わないの」
「それは……俺なりの、最良の選択」
「何それ。たかちゃんが楽になりたいだけなんじゃないの」
じとっと幼馴染を見上げる。一瞬で脳内は不満に埋め尽くされた。
不服そうに唇を尖らせていると、たかちゃんも苛立ちをあらわにした。
「俺がどれだけ悩んだと思ってるんだよ」
「知らない。だって中身を話してくれないじゃん。それなのに苦労を押し付けてこないで」
「それは……だけどっ」
「だけど、なに」
たかちゃんは口をひき結んでぐっとおし黙る。
たかちゃんが口で勝てたことはない。大抵この後は、
「あーもう!」
こう言って正直に話しはじ…………
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